机の上に置かれた鎖が一部だけ垂れ下がっている場合、その重力によって鎖全体が滑り落ちる運動を始めます。この問題は位置エネルギー、力学的エネルギー保存則、微分方程式を組み合わせて解く典型的な応用物理の問題です。ここでは質量M、長さLの一様な鎖について、位置エネルギー、速度、時間変化を順番に求めます。
問題の設定
鎖の線密度をλとすると、
λ=M/L
となります。
机の端から垂れ下がっている長さをxとします。机の面を位置エネルギーの基準(U=0)とします。
1. 垂れ下がり長さがx₀のときの位置エネルギーU₀
垂れ下がっている部分の質量は
m=λx₀=(M/L)x₀
です。
垂れ下がった部分の重心は机の面から下方へx₀/2の位置にあります。
したがって位置エネルギーは
U₀=-mg(x₀/2)
となるので、
U₀=-Mgx₀²/(2L)
が答えです。
2. 垂れ下がり長さがxのときの速度v
同様に、垂れ下がり長さがxのときの位置エネルギーUは
U=-Mgx²/(2L)
です。
鎖全体が同じ速さvで動くため、運動エネルギーKは
K=(1/2)Mv²
となります。
力学的エネルギー保存則より
U₀=U+K
を用いると、
-Mgx₀²/(2L)=-Mgx²/(2L)+(1/2)Mv²
整理して
v²=(g/L)(x²-x₀²)
したがって
v=√{(g/L)(x²-x₀²)}
が求める速さです。
3. xを時間Tの関数として求める
速度は
v=dx/dT
なので、
dx/dT=√{(g/L)(x²-x₀²)}
となります。
変数分離すると
dx/√(x²-x₀²)=√(g/L)dT
両辺を積分します。
左辺の積分公式
∫dx/√(x²-a²)=ln|x+√(x²-a²)|
を用いると
ln[(x+√(x²-x₀²))/x₀]=√(g/L)T
となります。
指数関数に直して整理すると
x+√(x²-x₀²)=x₀e^(√(g/L)T)
さらに整理すると
x=x₀cosh(√(g/L)T)
が得られます。
双曲線関数を使わない表現
coshを使わない場合は
x=(x₀/2){e^(√(g/L)T)+e^(-√(g/L)T)}
と表せます。
高校物理や大学初年度の講義ではこちらの形で答える場合もあります。
解答一覧
| 設問 | 答え |
|---|---|
| ①位置エネルギー | U₀=-Mgx₀²/(2L) |
| ②速さ | v=√{(g/L)(x²-x₀²)} |
| ③時間変化 | x=x₀cosh(√(g/L)T) |
まとめ
この問題のポイントは、垂れ下がった部分だけが位置エネルギーを持つことと、鎖全体が同じ速さで運動することです。
まず重心を用いて位置エネルギーを求め、次に力学的エネルギー保存則から速度を導きます。最後にv=dx/dTを利用して変数分離を行うことで、鎖の垂れ下がり長さxが時間Tに対して双曲線余弦関数で増加することが分かります。


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