非線形微分方程式系の平衡点の安定性を調べる問題では、線形化だけでは判断できない場合があります。特に原点のような平衡点では、ヤコビ行列による判定が不十分になることがあり、リアプノフ関数などを用いた解析が必要になります。
この記事では、微分方程式系 dx/dt=-y、dy/dt=-x^3+y^3 について、原点(0,0)の安定性をどのように調べるかを順番に解説します。
与えられた微分方程式系と平衡点の確認
考える微分方程式系は、
dx/dt=-y
dy/dt=-x^3+y^3
です。まず平衡点(静止点)を求めます。平衡点では、時間による変化が0になるため、
-y=0
-x^3+y^3=0
を満たす必要があります。
最初の式からy=0となり、これを2つ目の式に代入すると、
-x^3=0
となるため、x=0です。したがって平衡点は原点(0,0)だけになります。
線形化による安定性判定を確認する
まず、平衡点付近で線形化してみます。右辺をベクトル場として、
F(x,y)=(-y,-x^3+y^3)
と置きます。
ヤコビ行列は、
J(x,y)=
[[0,-1],[-3x^2,3y^2]]
となります。
原点(0,0)で評価すると、
J(0,0)=
[[0,-1],[0,0]]
になります。
この行列の固有値は、
λ²=0
より、λ=0の重解です。
固有値に正負の実部が存在しないため、通常の線形安定性判定では原点の安定性を判断できません。このような場合は非線形項を考慮する必要があります。
リアプノフ関数を用いて安定性を調べる
原点の安定性を調べるため、次のようなリアプノフ関数を考えます。
V(x,y)=1/2(x^4+y^2)
この関数は、原点で0となり、それ以外では正になるため、原点周辺で正定値関数になります。
次に時間微分を計算します。
dV/dt=2x^3(dx/dt)+y(dy/dt)
ここに微分方程式を代入すると、
dV/dt=2x^3(-y)+y(-x^3+y^3)
となります。
整理すると、
dV/dt=-2x^3y-x^3y+y^4
=-3x^3y+y^4
となります。
この形では常に負とは言えないため、このリアプノフ関数では十分な判定ができません。
別の視点から原点付近の挙動を見る
この系では、線形部分が
dx/dt=-y
dy/dt≈0
となるため、原点付近では単純な振動系ではなく、非線形項によって安定性が決まります。
2つの式から2階微分方程式に変形すると、xについて
d²x/dt²=-dy/dt=x^3-y^3
となります。
また、y=-dx/dtなので、
d²x/dt²=x^3+(dx/dt)^3
を得ます。
つまり、
x”=x^3+(x’)^3
という形になります。
ここでxが正の場合、x^3によって加速する方向に働き、xが負の場合も逆方向へ押し出す働きがあります。また速度項の3乗も、運動を減衰させるのではなく増幅させる方向に働きます。
原点の安定性の結論
この系では、原点近傍で非線形項が安定化する方向ではなく、不安定化する方向に作用します。
特に速度成分に対応するy^3の項は、エネルギーを減少させる摩擦項ではなく、状態を外側へ押し出す働きを持っています。
したがって、原点(0,0)は安定ではなく、不安定な平衡点であると判断されます。
まとめ
微分方程式系 dx/dt=-y、dy/dt=-x^3+y^3 の原点の安定性を調べる場合、まず平衡点を確認し、次に線形化を行います。
しかし、原点ではヤコビ行列の固有値がすべて0となるため、線形近似だけでは判断できません。そのため、非線形項を含めた解析が必要になります。
この系では非線形項が原点へ戻す働きではなく、外側へ離れる方向に作用するため、原点(0,0)は不安定な平衡点になります。


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