非線形微分方程式系の平衡点の安定性を調べる問題では、線形化だけでは十分な判断ができない場合があります。特に極座標変換やリアプノフ関数を利用すると、原点が安定なのか、漸近安定なのか、不安定なのかを明確に判断できます。
この記事では、dx/dt=-y-ax(x²+y²)、dy/dt=x+ay(x²+y²)(aは定数)で表される微分方程式系について、原点(0,0)の漸近安定性を調べる方法を分かりやすく解説します。
与えられた微分方程式系と平衡点の確認
対象となる微分方程式系は、
dx/dt=-y-ax(x²+y²)
dy/dt=x+ay(x²+y²)
です。
まず平衡点を確認します。平衡点ではdx/dt=0、dy/dt=0となる必要があります。
式を0にすると、
-y-ax(x²+y²)=0
x+ay(x²+y²)=0
となります。
x=y=0を代入すると両方の式が0になるため、原点(0,0)は平衡点です。今回はこの原点が漸近安定かどうかを調べます。
線形化による判定を確認する
まず一般的な方法としてヤコビ行列を用いて線形化します。
右辺を、
F(x,y)=(-y-ax(x²+y²),x+ay(x²+y²))
とします。
偏微分を計算すると、ヤコビ行列は原点で、
J(0,0)=
[[0,-1],[1,0]]
になります。
この行列の固有値を求めると、
λ²+1=0
より、
λ=±i
となります。
固有値の実部が0なので、線形化による判定では安定性を決定できません。したがって、非線形項を考える必要があります。
極座標変換で原点付近の動きを調べる
この微分方程式系はx²+y²という形を含んでいるため、極座標変換を利用すると解析しやすくなります。
x=r cosθ、y=r sinθ
と置きます。
ここで、rは原点からの距離を表します。つまり、原点へ近づくか遠ざかるかを見るには、rの時間変化を調べればよいことになります。
r²=x²+y²なので、両辺を時間微分すると、
d(r²)/dt=2x(dx/dt)+2y(dy/dt)
となります。
ここに微分方程式を代入すると、
d(r²)/dt=2x(-y-ax(x²+y²))+2y(x+ay(x²+y²))
となります。
半径rの変化から安定性を判断する
式を展開すると、
d(r²)/dt=-2axy(x²+y²)+2axy(x²+y²)
となり、非線形項は打ち消し合います。
したがって、
d(r²)/dt=0
になります。
これは、時間が経過しても原点からの距離rが変化しないことを意味します。
つまり、この系の解軌道は円周上を回転するだけで、原点へ近づくことも遠ざかることもありません。
実際に、この系ではx方向とy方向の項に回転成分があり、原点周辺では中心の周りを回るような運動になります。
漸近安定性の判定
漸近安定であるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 原点付近の解が原点から離れないこと(安定性)
- 時間が十分経過すると原点へ近づくこと
今回の系では、rが一定であるため、どれだけ時間が経過しても初期位置から原点へ近づくことはありません。
したがって、原点は安定ではありますが、漸近安定ではありません。
aの値によって回転方向や角速度は変化しますが、半径rの変化には影響しないため、どのような定数aの場合でも原点は漸近安定にはなりません。
リアプノフ関数による見方
リアプノフ関数として、
V(x,y)=1/2(x²+y²)
を考えます。
これは原点で0、それ以外では正となる正定値関数です。
時間微分すると、
dV/dt=x(dx/dt)+y(dy/dt)
となります。
代入すると、
dV/dt=x(-y-ax(x²+y²))+y(x+ay(x²+y²))
となり、整理すると、
dV/dt=0
になります。
つまり、リアプノフ関数の値は一定であり、エネルギーが減少して原点へ収束することはありません。
このことからも、原点は漸近安定ではなく、単に安定な平衡点であることが分かります。
まとめ
微分方程式系dx/dt=-y-ax(x²+y²)、dy/dt=x+ay(x²+y²)の原点(0,0)について調べると、線形化では固有値が純虚数となり、非線形解析が必要になります。
極座標変換やリアプノフ関数を用いると、x²+y²の値が時間によって変化しないことが分かります。
そのため、解は原点へ近づかず、一定の距離を保って回転運動を続けます。したがって、原点は安定ではあるものの、漸近安定ではありません。


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