逆行列の公式として「逆行列=余因子行列の転置×1/detA」と覚えている人は多いですが、正確にはどのような意味なのか、なぜこの形になるのか疑問に感じることがあります。
実際には、この公式は正しく、ただし「余因子行列」と「余因子行列の転置(余因子行列の随伴行列)」を混同しやすい点に注意が必要です。この記事では、逆行列の公式の正しい形や、それぞれの用語の関係、具体的な計算方法についてわかりやすく解説します。
逆行列を求める基本公式
正方行列Aに逆行列A⁻¹が存在する場合、逆行列は次の公式で求めることができます。
A⁻¹=(1/detA)×adjA
ここで、detAは行列式、adjAはAの余因子行列を転置したもの(余因子行列の随伴行列)を表します。
つまり、質問にある「逆行列=余因子行列の転置×1/detA」という表現は、数学的には正しい内容です。
余因子行列とは何か
余因子行列を理解するには、まず余因子について知る必要があります。
行列Aの各成分について、その成分を除いた小行列式に符号を付けたものが余因子です。例えば、行列式を展開するときに使われる値が余因子になります。
行列Aを次のように表します。
A=(aᵢⱼ)
この各成分aᵢⱼに対応する余因子をCᵢⱼとすると、余因子行列は次のようになります。
C=(Cᵢⱼ)
このCをそのまま使うのではなく、転置したものが逆行列の計算に利用されます。
なぜ余因子行列を転置する必要があるのか
逆行列の公式では、単純な余因子行列ではなく、その転置を使います。
つまり、
adjA=(余因子行列)ᵀ
となります。
転置とは、行と列を入れ替える操作です。例えば、2行3列目にある成分は、転置すると3行2列目へ移動します。
余因子を並べた行列は、そのままだと行列Aとの積で単位行列になる性質を持ちません。そのため、転置して配置を入れ替えることで、逆行列を作るための関係が成立します。
2×2行列で公式を確認する
具体例として、2×2行列で確認してみます。
A=
(a b)
(c d)
この行列の行列式は、
detA=ad−bc
です。
余因子を求めると、余因子行列は、
(d -c)
(-b a)
になります。
これを転置すると、
(d -b)
(-c a)
となります。
したがって逆行列は、
A⁻¹=1/(ad−bc) ×(d -b)
(-c a)
となり、高校数学や大学初年度の線形代数で学ぶ逆行列の公式になります。
逆行列が存在する条件はdetAが0ではないこと
逆行列の公式には1/detAが含まれているため、行列式が0の場合は計算できません。
つまり、逆行列が存在する条件は、
detA≠0
であることです。
行列式が0の行列は、行や列が一次従属になっており、情報が失われているため元に戻すことができません。
例えば、ある変換によって平面上の図形が完全につぶれてしまう場合、その変換を逆に戻すことはできません。これが逆行列が存在しない状態のイメージです。
よくある間違いと覚え方
逆行列の公式でよくある間違いは、「余因子行列そのものを使う」と覚えてしまうことです。
正しくは、
- 余因子を求める
- 余因子行列を作る
- 余因子行列を転置する
- 行列式detAで割る
という流れになります。
覚え方としては、「逆行列は余因子を並べ替えて、行列式で割ったもの」と考えると理解しやすくなります。
まとめ
「逆行列=余因子行列の転置×1/detA」という式は正しいです。
より正確に書くと、逆行列はA⁻¹=(1/detA)×adjAであり、adjAは余因子行列を転置したものです。
計算では、余因子行列をそのまま使わず必ず転置すること、そしてdetAが0ではないことが重要なポイントです。この2点を押さえれば、逆行列の公式を正しく利用できます。


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