非線形の連立微分方程式では、平衡点を求めた後、その周囲で解がどのように変化するかを調べることで安定性を判断できます。今回は dx/dt=y、dy/dt=-y-x(1-x) という2次元の力学系について、平衡点の求め方とヤコビ行列を用いた安定性解析の手順を解説します。
このタイプの問題では、微分方程式をそのまま解くのではなく、平衡状態の近くで線形化して固有値を調べる方法が基本になります。計算の流れを確認しながら、非線形系の安定性判定を理解していきましょう。
平衡点とは何か
平衡点とは、時間が経過しても状態が変化しない点のことです。連立微分方程式では、すべての時間微分が0になる座標を求めます。
今回の方程式は、
dx/dt=y
dy/dt=-y-x(1-x)
です。
平衡点では、
dx/dt=0、dy/dt=0
を満たす必要があります。
平衡点の求め方
まず、
dx/dt=y=0
より、平衡点では
y=0
となります。
次に、
dy/dt=-y-x(1-x)=0
へ y=0 を代入します。
すると、
-x(1-x)=0
となります。
これを整理すると、
x(1-x)=0
なので、
x=0 または x=1
です。
したがって平衡点は、
(x,y)=(0,0)、(1,0)
の2点になります。
安定性を調べるためのヤコビ行列
非線形微分方程式の安定性を調べる場合、平衡点の近くで線形近似を行います。そのためにヤコビ行列を求めます。
右辺を、
f(x,y)=y
g(x,y)=-y-x(1-x)
と置きます。
それぞれ偏微分すると、
∂f/∂x=0
∂f/∂y=1
また、
g(x,y)=-y-x+x²
なので、
∂g/∂x=-1+2x
∂g/∂y=-1
となります。
したがってヤコビ行列は、
J(x,y)=
[[0,1],[-1+2x,-1]]
です。
平衡点(0,0)の安定性
まず、平衡点(0,0)でヤコビ行列を評価します。
J(0,0)=
[[0,1],[-1,-1]]
固有値を求めるため、
|J-λI|=0
を計算します。
つまり、
|-λ,1;-1,-1-λ|=0
です。
行列式を計算すると、
λ(1+λ)+1=0
となり、
λ²+λ+1=0
を得ます。
解の公式から、
λ=(-1±√(1-4))/2
つまり、
λ=(-1±i√3)/2
です。
固有値の実部は、
Re(λ)=-1/2<0
なので、解は平衡点へ近づきます。
したがって、(0,0)は安定な渦状点(安定焦点)です。
平衡点(1,0)の安定性
次に平衡点(1,0)について調べます。
J(1,0)=
[[0,1],[1,-1]]
固有方程式は、
|-λ,1;1,-1-λ|=0
となります。
計算すると、
λ(1+λ)-1=0
つまり、
λ²+λ-1=0
です。
解の公式より、
λ=(-1±√5)/2
となります。
ここで、
λ₁=(-1+√5)/2>0
λ₂=(-1-√5)/2<0
となり、正と負の固有値が存在します。
したがって、(1,0)は鞍点であり不安定です。
安定性の意味を直感的に理解する
(0,0)では、少し状態がずれても時間とともに元の平衡点へ戻る方向へ動きます。ただし、完全に静止するのではなく、周囲を回転しながら近づくため、安定焦点と呼ばれます。
一方、(1,0)では、ある方向から近づくことはできますが、別の方向では離れてしまいます。このような点を鞍点といい、少しの変化で状態が大きく変化する不安定な平衡点です。
例えば、物理的には、(0,0)は摩擦によって徐々に止まる振動系、(1,0)は山の頂上に置いた球のような状態として考えることができます。
まとめ
微分方程式 dx/dt=y、dy/dt=-y-x(1-x) の平衡点は、
(0,0)、(1,0)
の2つです。
ヤコビ行列を用いて固有値を調べると、(0,0)は固有値の実部が負になるため安定な渦状点、(1,0)は正負の固有値を持つため不安定な鞍点と判断できます。
非線形微分方程式の安定性解析では、平衡点を求め、ヤコビ行列を作り、固有値の符号や実部を確認することが基本的な解法になります。


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