微分方程式系dx/dz=(1/z)Axのような形では、特異点z=0のまわりで解を一周させたときにどのような変化が起こるかを調べるため、モノドロミー行列を求めます。この記事では、行列AがA=[[8,5],[-10,-7]]で与えられた場合について、固有値計算からジョルダン標準形、そしてモノドロミー行列の導出までを順番に解説します。
dx/dz=(1/z)Axとモノドロミー行列の基本
考える微分方程式系は、
dx/dz=(1/z)Ax
という形です。ここでxは2成分のベクトル、Aは定数行列です。
z=0では1/zが発散するため、z=0は特異点になります。この特異点のまわりを一周すると、複素対数log zが2πiだけ変化します。その結果、解には行列指数関数による変化が現れます。
一般的に、この形の方程式のモノドロミー行列Mは、
M=exp(2πiA)
で与えられます。そのため、問題では行列Aの性質を調べて指数関数を計算することが重要になります。
与えられた行列Aの固有値を求める
今回の行列は、
A=[[8,5],[-10,-7]]
です。
固有値λは、特性方程式det(A-λI)=0から求めます。
A-λIは、
[[8-λ,5],[-10,-7-λ]]
なので、行列式を計算すると、
(8-λ)(-7-λ)-5×(-10)=0
となります。
展開すると、
(8-λ)(-7-λ)+50=0
となり、
-56-8λ+7λ+λ²+50=0
つまり、
λ²-λ-6=0
となります。
因数分解すると、
(λ-3)(λ+2)=0
なので、固有値は、
λ=3, -2
となります。
Aは対角化可能かを確認する
固有値が3と-2のように異なる場合、2次正方行列では必ず2本の独立した固有ベクトルを持つため、Aは対角化可能です。
したがって、ある正則行列Pを用いて、
A=PDP⁻¹
と書けます。
Dは固有値を並べた対角行列で、
D=[[3,0],[0,-2]]
となります。
この場合、行列指数関数は対角化を利用して簡単に計算できます。
行列指数関数exp(2πiA)を計算する
A=PDP⁻¹なので、
exp(2πiA)=P exp(2πiD) P⁻¹
となります。
ここで、
exp(2πiD)=[[exp(6πi),0],[0,exp(-4πi)]]
です。
複素指数関数の性質より、
exp(2πin)=1(nは整数)
なので、
exp(6πi)=1
exp(-4πi)=1
となります。
したがって、
exp(2πiD)=I
です。
よって、
exp(2πiA)=PIP⁻¹=I
となります。
モノドロミー行列の結果
以上より、この微分方程式系のz=0におけるモノドロミー行列は、
M=exp(2πiA)=I
となります。
つまり、z=0を中心として解を一周させても、解ベクトルは元の状態に戻ります。
これは、Aの固有値が整数であり、2πiを掛けた指数関数がすべて1になるために起こります。
この問題を解くときのポイント
このタイプの問題では、まず公式M=exp(2πiA)を確認し、その後Aの固有値を調べることが基本的な流れになります。
特に固有値が整数の場合、exp(2πiλ)=1になるため、計算が大幅に簡単になることがあります。
一方で、固有値が重解の場合はジョルダン標準形が必要になることがありますが、今回のように異なる固有値を持つ場合は対角化によって処理できます。
まとめ|A=[[8,5],[-10,-7]]の場合のモノドロミー行列
微分方程式系dx/dz=(1/z)Axでは、z=0のまわりのモノドロミー行列は、
M=exp(2πiA)
で求められます。
今回の行列Aでは固有値が3と-2であり、対角化可能でした。そして、exp(2πi×3)=exp(2πi×(-2))=1となるため、
モノドロミー行列は単位行列I
になります。
このように、固有値を調べることでモノドロミーの性質を効率よく判断できます。


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