微分方程式系dx/dz=(1/z)Axのような形は、複素解析や常微分方程式論で現れる代表的な正則特異点の問題です。特にz=0のまわりを一周したとき、解がどのように変化するかを表すモノドロミー行列を求めるには、行列Aの固有値や行列指数関数を利用します。この記事では、具体的な行列Aの場合について、モノドロミー行列を求める流れを分かりやすく解説します。
微分方程式系dx/dz=(1/z)Axとモノドロミーの意味
考える微分方程式系は、
dx/dz=(1/z)Ax
です。ここでxはベクトル、Aは定数行列です。この方程式はz=0で1/zが発散するため、z=0は特異点になります。
モノドロミー行列とは、z=0を中心として解を一周解析接続したとき、解ベクトルがどのように変換されるかを表す行列です。つまり、zの偏角が0から2πまで変化した後の解の変化を記録するものです。
与えられた行列Aの固有値を求める
今回の行列は、
A=
[[7/3, 1],[-4, -5/3]]
です。まず固有値を求めます。
固有値λは、特性方程式det(A-λI)=0から求めます。
A-λIは、
[[7/3-λ, 1],[-4, -5/3-λ]]
なので、行列式は、
(7/3-λ)(-5/3-λ)-1×(-4)=0
となります。
展開すると、
(7/3-λ)(-5/3-λ)+4=0
となり、計算すると、
λ²-2λ+1=0
つまり、
(λ-1)²=0
となります。
したがって、固有値はλ=1(重解)です。
行列Aのジョルダン標準形を確認する
固有値が重解の場合、Aが対角化可能かどうかを調べる必要があります。
λ=1に対する固有ベクトルを求めます。A-Iを計算すると、
A-I=[[4/3,1],[-4,-8/3]]
となります。
固有ベクトルは、
(4/3)x+y=0
より、
y=-4x/3
となります。
したがって固有ベクトルは1本しかなく、Aは対角化できません。そのためジョルダン標準形を利用します。
Aは、ある正則行列Pを用いて、
A=PJP⁻¹
と書けます。ここでJは、
J=[[1,1],[0,1]]
というジョルダン行列になります。
解の一般形と行列指数関数
微分方程式
dx/dz=(1/z)Ax
は、変数分離の考え方から、
x(z)=z^A x₀
という形で表されます。
ここでz^Aは行列指数関数を用いて、
z^A=exp(A log z)
と定義されます。
zを一周させると、複素対数は、
log z → log z+2πi
と変化します。
したがって解は、
x(z)→exp(A(log z+2πi))x₀
=exp(2πiA)x(z)
となります。
よってモノドロミー行列Mは、
M=exp(2πiA)
で与えられます。
具体的なモノドロミー行列の計算
Aのジョルダン形J=[[1,1],[0,1]]を利用します。
指数関数は、
exp(2πiJ)=exp(2πi(I+N))
と書けます。ここでNは、
N=[[0,1],[0,0]]
であり、N²=0です。
そのため指数展開は途中で終わり、
exp(2πiJ)=exp(2πiI)exp(2πiN)
となります。
exp(2πiI)=Iなので、
exp(2πiN)=I+2πiN
です。
したがって、
exp(2πiJ)=
[[1,2πi],[0,1]]
となります。
元の基底に戻すことで、
M=P[[1,2πi],[0,1]]P⁻¹
が求めるモノドロミー行列になります。
モノドロミー行列を求めるときのポイント
この種類の問題では、単純に固有値だけを見るのではなく、行列が対角化可能かどうかを確認することが重要です。
固有値がすべて異なる場合は対角化できるため、モノドロミー行列は固有値から簡単に求められます。しかし今回のように重解になる場合は、ジョルダン標準形による処理が必要になります。
また、dx/dz=(1/z)Ax型では、z=0のまわりの一周がlog zの2πiの変化につながるため、最終的にexp(2πiA)が現れることを覚えておくと、多くの問題に対応できます。
まとめ|dx/dz=(1/z)Axのモノドロミー行列はexp(2πiA)で求める
微分方程式系dx/dz=(1/z)Axでは、z=0のまわりを一周したときの解の変化は行列指数関数によって表されます。
今回の行列では固有値が1の重解となり、Aは対角化できないためジョルダン標準形を利用しました。その結果、モノドロミー行列は、
M=exp(2πiA)=P[[1,2πi],[0,1]]P⁻¹
として表されます。
この流れは、正則特異点を持つ線形微分方程式系で頻出する基本的な解法なので、固有値計算・ジョルダン標準形・行列指数関数の3点を押さえておくことが重要です。


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