カントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理に反例はある?空集合を使った単射と全射の関係を解説

数学

集合論には「ある集合から別の集合への単射が存在し、逆向きの単射も存在するなら、両方の集合の間には全単射が存在する」という有名な定理があります。これはカントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理(ベルンシュタインの定理)として知られています。

しかし、空集合を含む特殊な場合を考えると、「単射はあるのに全射がないのではないか」と疑問に感じることがあります。この記事では、空集合と写像の定義を確認しながら、この疑問がなぜ反例にならないのかを分かりやすく解説します。

カントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理とは

カントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理とは、集合Aと集合Bについて、AからBへの単射とBからAへの単射が両方存在するならば、AとBの間に全単射が存在するという定理です。

数式で表すと、A→Bの単射が存在し、B→Aの単射も存在するとき、AとBの要素を1対1に対応させる写像が存在します。

重要なのは、この定理が「どちらか一方向の写像があるだけ」という条件ではなく、両方向の単射の存在を条件にしている点です。

空集合から非空集合への単射は存在するのか

集合Aを空集合∅、集合Bを空集合ではない集合とします。この場合、AからBへの写像は存在します。

なぜなら、空集合からの写像は、定義域に対応させるべき要素が1つもないためです。つまり「何も対応させない」という写像がただ1つ存在します。

この写像は単射です。単射とは「異なる2つの元が同じ値に写らない」という条件ですが、そもそも比較する元が存在しないため、この条件を満たします。

非空集合から空集合への写像は存在しない

一方、BからA(つまり非空集合から空集合)への写像を考えると状況が変わります。

写像とは、定義域のすべての要素に対して、値を1つ対応させる規則です。しかし、値を取る場所であるAには要素が1つもありません。

そのため、Bに含まれる要素をどこへ送ればよいか決めることができません。したがって、BからAへの写像は存在しません。

なぜこれは定理の反例にならないのか

一見すると「AからBへの単射はあるのに、BからAへの写像がない」と感じるため、定理に矛盾しているように見えます。

しかし、カントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理の条件は「AからBへの単射が存在し、かつBからAへの単射が存在すること」です。

今回の場合、BからAへの写像そのものが存在しないため、当然BからAへの単射も存在しません。つまり、定理を適用するための前提条件を満たしていないのです。

全射についても確認してみる

全射とは、終域のすべての要素が少なくとも1回は写像によって到達されることを意味します。

A=∅、B≠∅の場合、AからBへの写像を考えると、定義域が空なので何も写しません。そのため、Bに存在する要素をすべて覆うことはできず、全射ではありません。

つまり、空集合から非空集合への写像は存在しますが、単射ではあっても全射にはなりません。

具体例で考える空集合の写像

例えばAを「誰もいない部屋」、Bを「3人の人がいる部屋」と考えます。

AからBへの対応では、Aには対象がいないため、「誰を誰に対応させるか」という問題は発生しません。この状態は単射の条件を満たします。

しかしBからAへの対応では、3人全員を誰もいない場所へ送る必要があります。送り先が存在しないため、そのような対応は作れません。

まとめ

A=∅、B≠∅の場合、AからBへの単射は存在します。しかし、BからAへの写像は存在しないため、BからAへの単射も存在しません。

カントール・シュレーダー・ベルンシュタインの定理は、両方向の単射が存在する場合にのみ適用されます。そのため、この例は反例ではなく、単に定理の条件を満たしていないケースです。

集合論では、空集合を含む場合に直感と異なる結果になることがありますが、写像や単射・全射の定義を正確に確認すると矛盾なく理解できます。

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