線形代数では、線形写像が単射なのか全射なのかを判定する問題がよく登場します。しかし、定義だけを覚えていると実際の判別方法が分かりにくいことがあります。
この記事では、線形写像の単射・全射の意味から、核(カーネル)や像(イメージ)、行列の階数を利用した具体的な判別方法まで、例を交えながら解説します。
線形写像の単射と全射の意味
線形写像とは、ベクトル空間の間の写像で、和とスカラー倍を保つものです。つまり、写像fについて、
f(x+y)=f(x)+f(y)、f(ax)=af(x)
が成り立つものを線形写像といいます。
線形写像f:V→Wについて、単射と全射は次のように定義されます。
| 性質 | 意味 |
|---|---|
| 単射 | 異なる元が同じ値に写らないこと |
| 全射 | 写像先のすべての元が何かの元から写されること |
簡単に言えば、単射は「入力を区別できるか」、全射は「出力側をすべてカバーできるか」を確認する性質です。
線形写像が単射であるかを判別する方法
線形写像が単射かどうかを調べる最も重要な方法は、核(ker f)を調べることです。
線形写像fが単射であるための必要十分条件は、
ker f={0}
となることです。
つまり、f(x)=0となるベクトルxがゼロベクトル以外に存在しなければ、その線形写像は単射です。
具体例:単射かどうかを確認する
例えば、線形写像f:R2→R2を考えます。
f(x,y)=(x+y,x-y)
とします。
f(x,y)=(0,0)となる条件を調べると、
x+y=0、x-y=0
となります。この2つの式を解くと、x=0、y=0だけになります。
したがってker f={0}なので、この線形写像は単射です。
行列を使った単射の判別方法
線形写像を行列Aで表す場合、単射かどうかは連立方程式Ax=0を調べることで判断できます。
Ax=0の解がx=0だけなら単射です。これは、行列Aの列ベクトルが一次独立であることと同じ意味になります。
また、m×n行列Aの場合、単射になる条件は次のようになります。
- 階数rank(A)=n
- 列の数と同じだけランクがある
- 核の次元が0
例えば、3次元から2次元への線形写像では、入力側の次元が3で出力側の次元が2なので、単射になることはありません。なぜなら、3次元分の情報を2次元に完全に区別して写すことはできないからです。
線形写像が全射であるかを判別する方法
全射かどうかを判断する場合は、像(Im f)が写像先の空間全体になっているかを確認します。
つまり、
Im f=W
ならばfは全射です。
行列で表される線形写像の場合、行列のランクを調べることで判別できます。
m×n行列Aで表される線形写像が全射になる条件は、
- rank(A)=m
- 行の数と同じだけランクがある
- Ax=bが任意のbについて解を持つ
となります。
具体例:全射かどうかを確認する
例えば、線形写像f:R3→R2が行列
A=[[1,0,0],[0,1,0]]
で表されているとします。
この行列のランクは2で、出力空間R2の次元と一致します。
したがって、R2のすべてのベクトルを作ることができ、この線形写像は全射です。
単射と全射を同時に判断する方法
有限次元ベクトル空間では、入力空間と出力空間の次元によって単射・全射の関係が変わります。
| 条件 | 判定 |
|---|---|
| 次元V<次元W | 単射になる可能性があるが全射は不可能 |
| 次元V>次元W | 全射になる可能性があるが単射は不可能 |
| 次元V=次元W | 単射なら全射、全射なら単射 |
特に同じ次元のベクトル空間間の線形写像では、行列が正則行列であるかどうかを見ることでも判断できます。
正方行列の場合、行列式が0でなければ単射かつ全射になります。
単射・全射の判別でよく使うポイント
線形写像の判定では、以下の3つを覚えておくと多くの問題に対応できます。
- 単射を調べるなら核ker fを見る
- 全射を調べるなら像Im fを見る
- 行列の場合はランクrank(A)を見る
特に単射は「Ax=0の解が0だけ」、全射は「Ax=bがどんなbでも解ける」と考えると理解しやすくなります。
まとめ:線形写像の単射・全射は核と像、ランクで判断する
線形写像が単射であるかを判断するには、核がゼロベクトルだけになるかを確認します。一方、全射であるかを判断するには、像が出力空間全体になるかを確認します。
行列で表された線形写像の場合は、単射なら列ランク、全射なら行ランクを見ることで効率的に判定できます。
定義だけでなく、核・像・階数の関係を理解すると、線形写像の判別問題を正確に解けるようになります。


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