高精度な電子回路では、基準電圧(電圧リファレンス)のノイズが測定精度や回路性能を大きく左右します。特に1nV/√Hz@1kHz程度という非常に低いノイズレベルを求める場合、市販の高性能リファレンスICだけでは要求を満たせないことがあります。そのため、リファレンス自体の性能だけではなく、フィルタや後段回路を組み合わせてノイズを低減する設計が重要になります。この記事では、超低ノイズ電圧リファレンスを作るための基本的な考え方や、RCRCフィルターの有効性について解説します。
電圧リファレンスのノイズが決まる要因
電圧リファレンスは、回路に安定した基準電圧を供給する部品です。しかし、理想的な一定電圧を出力するわけではなく、内部回路から発生する熱雑音や半導体のフリッカーノイズなどが存在します。
例えば、高精度な基準電圧ICでも数十nV/√Hz程度のノイズ密度を持つものがあります。これは一般的な用途では十分低い値ですが、1nV/√Hz級の要求では大きな問題になります。
そのため、超低ノイズ用途では「ノイズの低いリファレンスを選ぶ」だけではなく、「発生したノイズを後段で減らす」という考え方が必要になります。
RCフィルターで電圧リファレンスのノイズは低減できるか
電圧リファレンスの出力にRCローパスフィルターを入れることで、高周波側のノイズを低減することは可能です。
RCフィルターは抵抗RとコンデンサCによって構成され、カットオフ周波数以上の信号成分を減衰させます。例えば、1kHz付近のノイズを問題にしている場合、十分低いカットオフ周波数に設定すれば、その周波数帯のノイズを抑えることができます。
ただし、RCフィルターだけでは抵抗自身が持つ熱雑音も発生します。そのため、極低ノイズ設計では抵抗値を大きくしすぎないことや、低雑音抵抗を使用することも重要です。
RCRCフィルターは2次ローパスフィルターとして使えるのか
RCRCフィルターは、RCローパスフィルターを2段直列に接続した構成であり、理論的には2次ローパスフィルターとして動作します。
1段のRCフィルターは周波数が高くなるにつれて-20dB/decadeの減衰特性を持ちます。これを2段接続すると、理想的には-40dB/decadeの減衰特性になります。
ただし、実際の回路では2段のRCが完全に独立して動作するとは限りません。後段の負荷や抵抗値、コンデンサの種類によって特性が変化するため、設計時にはインピーダンスの影響を考慮する必要があります。
超低ノイズ化ではRCRCだけでは不十分な場合がある理由
RCRCフィルターは有効な手段ですが、1nV/√Hz級のノイズを目指す場合には、それだけで十分とは限りません。
理由の一つは、抵抗の熱雑音です。抵抗にはジョンソンノイズが存在し、抵抗値が高いほどノイズ電圧が増加します。
例えば、数kΩ以上の抵抗を使ったフィルターでは、元のリファレンスICよりもフィルター自身がノイズ源になる可能性があります。そのため、低抵抗値のRCフィルターや、後段に低ノイズバッファアンプを組み合わせる設計がよく使われます。
超低ノイズ電圧リファレンスで利用される代表的な方法
高性能な電圧リファレンスでは、単純なRCフィルター以外にも複数のノイズ低減技術が利用されます。
- 低ノイズ電圧リファレンスICの選択
- 低ノイズLDOによる電源安定化
- RCまたはLCフィルターによる高周波ノイズ除去
- 低雑音オペアンプによるバッファリング
- 温度制御によるドリフト低減
- 複数リファレンスの平均化によるノイズ低減
例えば、複数の同じリファレンスを並列化して平均を取る方法では、理論上ノイズは√N分の1に低減できます。ただし、回路の複雑化やコスト増加というデメリットもあります。
1nV/√Hz級を目指す場合の設計上の注意点
非常に低いノイズレベルを狙う場合、部品選定だけでなく基板設計や測定環境も重要になります。
例えば、周囲の電磁ノイズ、グランドループ、電源ラインからのノイズ混入などによって、回路本来の性能を確認できないことがあります。
また、測定器自身のノイズフロアも考慮する必要があります。1nV/√Hz程度の評価では、一般的なオシロスコープやマルチメータではなく、低ノイズ測定用の装置や適切な測定回路が必要になります。
まとめ|超低ノイズ電圧リファレンスはフィルターと回路全体で考える
1nV/√Hz級の超低ノイズ電圧リファレンスを実現するには、リファレンスIC単体の性能だけに頼ることは難しく、フィルターや後段回路を含めた設計が重要になります。
RCRCフィルターは理論上2次ローパスフィルターとして利用でき、高周波ノイズ低減には有効です。しかし、抵抗の熱雑音や負荷による影響もあるため、単純に段数を増やせばよいわけではありません。
高精度回路では、低ノイズ部品の選択、適切なRCフィルター設計、低雑音バッファ、基板設計、測定環境まで含めて総合的にノイズを管理することが、超低ノイズ電圧リファレンスを実現するポイントになります。


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