代数学の基本定理の証明をわかりやすく解説|最小値を利用した証明の流れ

算数

代数学の基本定理とは、「次数が1以上の複素係数多項式は、必ず少なくとも1つの複素数解を持つ」という非常に重要な定理です。高校数学では直接扱うことは少ないですが、複素数や解析学、代数学を学ぶ上で基礎となる結果です。

この記事では、複素数z=a+biを代入した多項式の実部と虚部を利用し、最小値の考え方から代数学の基本定理を証明する方法を丁寧に解説します。特に、提示された不等式①〜⑥がどのような意味を持つのかを順番に整理します。

代数学の基本定理とは何か

代数学の基本定理は、複素数の世界では「n次方程式は必ずn個の解を持つ」という事実につながる重要な定理です。

例えば、実数の範囲ではx²+1=0のような方程式は解を持ちません。しかし複素数まで広げるとx=i、x=-iという解を持ちます。

この定理は、どんな複雑な多項式でも複素数の範囲では必ず解が存在することを保証しています。

証明で考える関数の意味

n次多項式P(z)に対して、z=a+biを代入します。このとき、結果は複素数なので、

P(a+bi)=f(a,b)+ig(a,b)

と表すことができます。ここでf(a,b)は実部、g(a,b)は虚部です。

つまり、f(a,b)=0かつg(a,b)=0になれば、P(a+bi)=0となり、a+biは方程式の解になります。

証明では、このfとgが同時に0になる点が存在することを示します。

絶対値の2乗を最小にする点を考える

証明の中心となる考え方は、次の関数を考えることです。

F(a,b)=f(a,b)²+g(a,b)²

これは複素数P(a+bi)の絶対値の2乗に等しくなります。

もしP(z)がどこでも0にならないと仮定すると、F(a,b)は常に正になります。そして連続関数なので、どこかで最小値を取ります。

その最小値を取る点を(a,b)とします。この点では、少しa方向やb方向に動いてもFの値は小さくならないはずです。

①と②から導かれる条件

①と②は、a方向へ少し移動した場合の不等式です。

つまり、

F(a,b)≦F(a+h,b)、F(a,b)≦F(a-h,b)

が成立しています。

これは(a,b)がFのa方向について最小点であることを意味します。

ここでテイラー展開を使うと、

F(a+h,b)=F(a,b)+hF_a(a,b)+Θ(h²)

となります。

同様に、

F(a-h,b)=F(a,b)-hF_a(a,b)+Θ(h²)

となります。

これらを①②の条件に代入すると、一次の項について、

-Θh≦F_a(a,b)≦Θh

という形になります。

hを0に近づけることで、

F_a(a,b)=0

が得られます。

⑤の式からfとgの関係を理解する

F(a,b)=f(a,b)²+g(a,b)²なので、aで偏微分すると、

F_a(a,b)=2f(a,b)f_a(a,b)+2g(a,b)g_a(a,b)

になります。

したがってF_a(a,b)=0より、

f(a,b)f_a(a,b)+g(a,b)g_a(a,b)=0

が得られます。

これが質問中の⑤に対応する部分です。

③と④からb方向についても同じことを示す

③と④はb方向への移動についての条件です。

つまり、

F(a,b)≦F(a,b+h)、F(a,b)≦F(a,b-h)

が成立します。

先ほどと同じようにテイラー展開を行うと、

F_b(a,b)=0

が得られます。

これを展開すると、

f(a,b)f_b(a,b)+g(a,b)g_b(a,b)=0

となります。これが⑥の意味です。

⑤と⑥からなぜf(a,b)=g(a,b)=0になるのか

ここからが証明の重要な部分です。

⑤と⑥によって、最小点ではfとgの変化方向に関する条件がすべて満たされています。

さらに多項式P(z)が0でないと仮定すると、複素数の性質を利用して、少し移動することでF(a,b)より小さい値を作ることができます。

しかしこれは「(a,b)はFの最小点である」という仮定に矛盾します。

したがって、最小値は0でなければならず、

f(a,b)=0、g(a,b)=0

となります。

つまり、P(a+bi)=0となる複素数a+biが存在することが証明されます。

証明全体の流れを整理

この証明の流れは次のように整理できます。

段階 内容
1 P(a+bi)を実部fと虚部gに分ける
2 F=f²+g²を考える
3 Fが最小になる点(a,b)を取る
4 a方向、b方向への変化を調べる
5 偏微分が0になることを示す
6 矛盾を利用してF=0を導く

この方法は、複素数の方程式を実数2変数の問題に変換し、解析学の最小値の考え方を利用している点が特徴です。

まとめ|代数学の基本定理は最小値と微分を利用して証明できる

代数学の基本定理の証明では、複素多項式P(z)を実部と虚部に分け、絶対値の2乗F=f²+g²を考えます。

Fが最小となる点では、どの方向へ少し動いても値が増えるため、偏微分が0になります。これが質問中の①〜⑥の不等式の意味です。

最終的には、もしFが0にならないと仮定すると矛盾が生じるため、F=0となる点が存在し、P(z)=0となる複素数解が存在することが示されます。

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