押しボタンスイッチを1回押すとON、もう1回押すとOFFになる回路は、電気制御の基本でありながら、リレーだけで実現しようとすると意外と考え方が難しい回路です。このような動作は照明スイッチや機械装置の操作ボタンなどにも使われています。この記事では、1個の押しボタンスイッチとリレーを使って交互動作(オルタネート動作)を実現する方法と、そのシーケンスの考え方を詳しく解説します。
押すたびにON・OFFする回路には記憶機能が必要
通常の押しボタンスイッチは、押している間だけ接点が変化する部品です。例えば、押している間だけランプを点灯させることはできますが、手を離した後もON状態を維持することはできません。
1回押してON、次に押してOFFという動作を実現するには、現在の状態を覚えておく「記憶回路」が必要になります。この記憶の役割をリレーの自己保持回路やラッチ回路で作ります。
シーケンス制御では、このような状態を保持する回路を「自己保持回路」や「ラッチ回路」と呼びます。
基本的なリレー自己保持回路では交互動作にならない
一般的な自己保持回路では、押しボタンを押すとリレーが動作し、そのリレー自身の接点で電源を維持します。
例えば、以下のような動作になります。
・押しボタンを押す
↓
・リレーコイルがONになる
↓
・リレーの自己保持接点が閉じる
↓
・ボタンを離してもリレーはON状態を維持する
しかし、この回路では次にボタンを押してもOFFにはなりません。OFFにするには別途停止ボタンや遮断回路が必要になります。
そのため、1個の押しボタンだけでON・OFFを交互に切り替えるには、自己保持だけではなく状態を反転させる仕組みが必要になります。
リレーを複数使った交互ON・OFF回路の考え方
リレーを複数使用すると、押すたびに状態を切り替える回路を作ることができます。代表的な方法は、2個のリレーを使って交互に保持する方式です。
使用する部品例は以下のようになります。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| 押しボタンスイッチ(1a接点) | 操作入力 |
| リレーA | ON状態を保持 |
| リレーB | OFF状態への切替制御 |
| リレー接点 | 自己保持と切替 |
ただし、単純なリレーだけでは、押すたびに内部状態を反転する動作は複雑になります。そのため実際の産業機器では、ラッチングリレーやフリップフロップ回路、PLCの内部リレーなどが利用されることが多くあります。
ラッチングリレーを使えば簡単に実現できる
最も簡単な方法は、一般的なリレーではなく「ラッチングリレー(保持型リレー)」を使用する方法です。
ラッチングリレーは、一度パルス信号を受けると接点状態を保持し、次のパルスで反対の状態へ切り替わります。
動作シーケンスは次のようになります。
1回目の押下
押しボタンON → ラッチングリレー動作 → 接点ON → 負荷ON
2回目の押下
押しボタンON → ラッチングリレー反転 → 接点OFF → 負荷OFF
この方式なら、押しボタン1個だけで直感的なON・OFF操作が可能になります。
通常のリレーだけで作る場合のシーケンス例
通常のリレーを複数使って作る場合は、状態保持用のリレーとリセット用のリレーを組み合わせます。
基本的な流れは以下になります。
【初期状態】
リレーA OFF
リレーB OFF
負荷 OFF
【1回目のボタン入力】
押しボタン入力
↓
リレーA励磁
↓
リレーA自己保持
↓
負荷ON
【2回目のボタン入力】
押しボタン入力
↓
リレーB励磁
↓
リレーA保持解除
↓
負荷OFF
このような回路は実現可能ですが、接点数やタイミング制御が必要になるため、単純なリレー回路としては難易度が高くなります。
現代ではPLCや電子回路で置き換えられる
昔ながらのリレーシーケンスでは、複数のリレーと補助接点を組み合わせて状態記憶を作りました。しかし現在の制御装置では、PLCやマイコンを使って同じ動作を簡単に実現できます。
例えばPLCなら、押しボタン入力のたびに内部メモリを反転させるだけで、ON・OFF切替制御ができます。
また、家庭用の照明スイッチなどでは、内部に電子ラッチ回路を持ったスイッチが使われています。
まとめ:押すたびにON・OFFする回路は状態保持と反転がポイント
1個の押しボタンスイッチでリレーを使い、押すたびにON・OFFする動作は可能です。しかし、単純な自己保持回路だけでは実現できず、現在の状態を記憶して反転させる仕組みが必要になります。
簡単に作るならラッチングリレーを使う方法が最も分かりやすく、通常のリレーだけで作る場合は複数のリレー接点を利用したシーケンス設計が必要になります。
この回路はシーケンス制御の基本的な考え方であり、工場設備や自動制御装置を理解する上でも重要なテーマです。


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