オペアンプを使った差動増幅回路では、抵抗比から増幅率を計算できます。しかし、実際の回路では理論上10倍になるはずが、測定すると増幅率が変化したり、入力電圧によってゲインが低下したりすることがあります。特にNJM2904のような単電源オペアンプを使用し、小さなシャント抵抗電圧を増幅する場合には、オペアンプの特性や回路条件を確認する必要があります。この記事では、差動増幅回路の増幅率が計算値と異なる主な原因と確認ポイントについて解説します。
差動増幅回路の理論上の増幅率
一般的な差動増幅回路では、4本の抵抗を使用し、抵抗比によって増幅率が決まります。入力抵抗をR1、帰還抵抗をR2とすると、理想的な条件では増幅率は次の式で表されます。
増幅率 = R2 ÷ R1
今回の回路ではR1=1kΩ、R2=10kΩなので、理論上の増幅率は10倍になります。また、R3とR4の比率も同じにすることで、2つの入力電圧の差だけを増幅する差動増幅回路として動作します。
しかし、この計算式はオペアンプが理想的に動作することを前提にしています。実際のNJM2904では、入力範囲、出力範囲、オフセット電圧、スルーレートなどの影響により、理論値からずれる場合があります。
NJM2904の入力コモンモード範囲が原因になる可能性
NJM2904は汎用オペアンプですが、入力電圧範囲には制限があります。特に単電源15Vで使用する場合、入力端子に印加できる電圧が電源電圧いっぱいまで対応しているわけではありません。
差動増幅回路では、増幅したい信号が小さくても、入力端子にはシャント抵抗の両端電圧そのものが印加されます。負荷電流が増えるとシャント抵抗両端の電位も上昇し、オペアンプの入力可能範囲を超える可能性があります。
例えば、20Ωの負荷に10Vを印加すると電流は約0.5Aになります。0.1Ωのシャント抵抗では0.05Vの電圧降下ですが、シャント抵抗の配置によってはオペアンプ入力の同相電圧が高くなり、正常な増幅ができなくなる場合があります。
出力電圧が限界に近づきゲインが低下している可能性
今回のように電圧を3Vから10Vまで上げた際に、増幅率が41倍から15倍へ低下する現象は、オペアンプ出力の飽和が疑われます。
理論上10倍増幅の場合、シャント抵抗の電圧が例えば50mVなら出力は500mVになります。しかし、入力条件や回路構成によって出力電圧が電源電圧側へ近づくと、オペアンプはそれ以上電圧を出力できません。
NJM2904はレール・ツー・レール出力ではないため、15V電源でも出力は15V付近まで振れるわけではありません。出力上限に近づくと波形や直流値が歪み、見かけ上の増幅率が低下します。
シャント抵抗測定ではハイサイド・ローサイドの違いに注意する
シャント抵抗の電圧測定では、抵抗をどこに配置しているかが非常に重要です。特に電源側にシャント抵抗を置くハイサイド測定では、入力電圧の基準がGNDから大きく離れるため、一般的な差動増幅回路では問題が発生しやすくなります。
例えば、負荷の上側にシャント抵抗を配置している場合、オペアンプの入力端子には数Vから十数Vのコモンモード電圧が加わります。この状態でNJM2904を使うと、入力範囲を超えて正常動作しなくなる可能性があります。
一方、ローサイド測定ではシャント抵抗をGND側に配置するため、入力電圧が低くなり、一般的なオペアンプでも測定しやすくなります。ただし、負荷側のGND電位が変動するため、用途によって選択が必要です。
抵抗誤差による差動増幅率のずれも確認する
差動増幅回路では、抵抗比の一致が非常に重要です。R1とR3、R2とR4の比率が完全に一致しないと、理想的な差動増幅動作からずれます。
今回使用している抵抗は比較的高精度ですが、1kΩ側が1%、10kΩ側が0.1%の場合、組み合わせによっては若干のゲイン誤差や同相信号除去性能の低下が発生します。
ただし、入力電圧によって増幅率が大きく変化する場合は、抵抗誤差よりもオペアンプの入力範囲や出力飽和の影響を疑う方が一般的です。
改善するための回路対策
シャント抵抗の電圧を正確に測定したい場合は、一般的な汎用オペアンプによる差動増幅回路よりも、電流センスアンプや計装アンプを使用する方法があります。
電流センスアンプは、小さなシャント電圧を高い同相信号除去性能で増幅することを目的として設計されています。そのため、ハイサイド測定や電源電圧に近い位置での測定に向いています。
また、NJM2904を使用する場合でも、入力電圧範囲と出力範囲を確認し、増幅後の電圧がオペアンプの動作範囲内に収まるよう設計することが重要です。
まとめ:差動増幅率が理論値と違う原因はオペアンプの限界を確認することが重要
差動増幅回路の増幅率は抵抗比で決まりますが、実際の回路ではオペアンプの特性によって理論通りにならない場合があります。
NJM2904を使ったシャント抵抗測定で入力電圧を上げるほど増幅率が低下する場合、特に確認すべきなのは出力飽和、入力コモンモード範囲の超過、シャント抵抗の配置です。
理論式だけで判断せず、オペアンプのデータシートにある入力電圧範囲や出力電圧範囲を確認しながら設計することで、安定した差動増幅回路を作ることができます。


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