リトマス紙実験で陽極側が徐々に赤くなる理由|HClの電気泳動と拡散・反応メカニズムの解説

化学

中学理科の酸・アルカリの実験で、食塩水をしみこませたろ紙上にHClを滴下し、青色リトマス紙の変化を観察する実験は、イオンの移動を理解するうえで重要なものです。このとき水素イオンが陰極側へ移動する現象はよく知られていますが、時間が経つと陽極側もわずかに赤くなる現象に疑問を持つケースがあります。本記事では、その理由を電気泳動・拡散・溶液反応の観点から整理します。

HCl水溶液中で起こっている基本現象

塩酸(HCl)は水中で完全に電離し、水素イオン(H⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に分かれます。

電場をかけると、正電荷を持つH⁺は陰極へ、負電荷を持つCl⁻は陽極へ移動します。

このときリトマス紙の色変化はH⁺濃度によって決まり、H⁺が多い場所が赤く変色します。

なぜ陰極側に水素イオンが集まるのか

水素イオンは非常に小さく、水和状態でも移動度が高いため、電場の影響を強く受けて速く移動します。

そのため初期段階では陰極側にH⁺が集まりやすく、青色リトマス紙が速やかに赤く変化します。

一方でCl⁻は移動はするものの、H⁺ほど速くないため濃度分布に時間差が生じます。

陽極側が時間経過で赤くなる理由(拡散現象)

時間が経つと、電気泳動だけでなく「拡散」によるイオン移動が支配的になります。

このため、陰極側に集まったH⁺の一部が濃度差によって再び全体へ広がり、陽極側にも少量到達します。

その結果、陽極側でもわずかにH⁺濃度が上昇し、リトマス紙が薄く赤く変化します。

Cl⁻や副反応の影響について

Cl⁻が塩素ガスになり水と反応してH⁺を生成するという考えは、中学レベルの条件ではほぼ起こりません。

今回の現象の主因は化学反応ではなく、あくまでイオンの移動と拡散のバランスです。

またろ紙内の水分分布や毛細管現象も、イオンの広がり方に影響します。

まとめ

陽極側が時間経過で赤くなるのは、Cl⁻の反応によるものではなく、H⁺が拡散によって全体に再分布するためです。

電気泳動で一方向に集まったイオンも、時間が経てば濃度差によって再び広がります。

そのため最終的には、ろ紙全体でわずかな酸性化が進み、陽極側にも色変化が現れるのです。

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