『大鏡』の一節に出てくる「男子も」「女子も」「あはれといふ人も」という三つの「も」は、一見すると単なる繰り返しのように見えますが、古文の文法や表現意図を理解すると、明確な役割を持って配置されていることがわかります。
本記事では、この「も」の働きを文法的・意味的な観点から整理し、なぜ三つすべてが必要なのかを解説します。
『大鏡』の該当箇所の意味と全体像
問題の一節は、ある一族が絶えていくことへの嘆きと、その後の状況に対する予測や感情を述べたものです。
「男子も女子もありとも、はかばかしくてはあらせじ」という部分では、子孫が残っても立派に成長するとは限らないという否定的な見通しが示されています。
さらに「それをも恨みむ」では、仮に同情する人がいても、それすらも恨むだろうという強い感情が表現されています。
「も」の基本的な文法的役割
「も」は古文において係助詞として働き、「〜もまた」「〜でさえ」といった意味を持ちます。
単なる接続ではなく、対象を強調し、条件や範囲を広げる役割があります。
このため、複数回使われる場合は、それぞれが独立した強調対象を持ちます。
「男子も」「女子も」が示す対称構造
「男子も」「女子も」は、人間の子孫すべてを網羅する表現です。
男性・女性という区別を並列的に示すことで、「どちらであっても例外ではない」という意味を強めています。
ここでは対象の全体性を示すために二つの「も」がそれぞれ必要になります。
「あはれといふ人も」における追加の強調
三つ目の「も」は、「あはれといふ人も」つまり同情する人が存在したとしても、という譲歩の意味を担っています。
前の二つが“身内や子孫”に関する範囲なのに対し、これは“外部の人間”への広がりを示します。
段階的に範囲を広げることで、表現の重層性が生まれています。
三つの「も」が生み出す表現効果
三つの「も」はそれぞれ異なる対象を強調し、意味の重なりを避けながら段階的に視点を拡大しています。
これにより、「身内」「子孫」「第三者」という三層構造が形成され、感情の強さが強調されます。
単なる繰り返しではなく、修辞的な構造として機能しています。
まとめ
『大鏡』における三つの「も」は、それぞれ異なる対象を強調する係助詞として働いています。
男子・女子という内部の全体性、さらに第三者への広がりを段階的に示すことで、文章全体の意味が強調されています。
古文では助詞の反復も重要な修辞技法であり、意味理解の鍵となります。


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