石炭と水からナフサやエチレンは作れる?石炭化学と合成燃料技術をわかりやすく解説

化学

ナフサは本来、原油を蒸留して得られる石油製品ですが、技術的には石炭と水を原料としてエチレンやプロピレン、ベンゼン、トルエンなどの化学製品を製造することも可能です。ただし、石油から製造する場合と比べて工程が複雑でコストが高くなるため、経済性が大きな課題となっています。

石炭と水から化学原料を作ることは可能なのか

結論から言うと可能です。石炭を高温で処理し、水蒸気と反応させることで一酸化炭素(CO)と水素(H2)を主成分とする合成ガスを作ることができます。

この合成ガスは化学工業の重要な原料であり、さまざまな化学製品や燃料の出発点となります。

石炭→合成ガス→化学製品という流れが基本です。

石炭からエチレンやプロピレンは作れる?

石炭から得られた合成ガスを利用してメタノールを製造し、そのメタノールからエチレンやプロピレンを作る技術があります。

この方法はMTO(Methanol To Olefins)と呼ばれ、中国などで実用化されています。

工程 生成物
石炭ガス化 合成ガス
合成ガス反応 メタノール
MTO法 エチレン・プロピレン

つまり、石油がなくても理論上はプラスチック原料を製造できます。

ベンゼンやトルエンはどうやって作るのか

石炭は19世紀から20世紀前半にかけて化学工業の主要原料でした。石炭を乾留するとコークス炉ガスやコールタールが得られます。

コールタールにはベンゼン、トルエン、ナフタレンなどの芳香族化合物が含まれており、分離精製によって取り出すことができます。

実際に石油化学が普及する以前は、多くの化学製品が石炭由来でした。

ナフサそのものは作れるのか

ナフサは本来、原油を蒸留した際に得られる特定の沸点範囲の炭化水素混合物です。そのため厳密には石炭から直接ナフサを作るわけではありません。

しかし、フィッシャー・トロプシュ法などを利用すると、石炭由来の合成ガスからガソリンや軽油、ナフサ相当の炭化水素混合物を合成できます。

第二次世界大戦中のドイツや、現在の南アフリカでは実際に石炭液化技術が活用されてきました。

原発再開で実現しやすくなるのか

原子力発電所の再稼働によって大量の電力を安定供給できれば、水素製造や化学プラントの運転コスト低減に一定の効果は期待できます。

ただし、石炭からエチレンやベンゼンを作る技術自体は原発がなくても実現可能です。問題は技術の有無ではなく、経済性と環境負荷です。

石炭利用は大量の二酸化炭素を排出するため、現在は脱炭素の観点から慎重な検討が求められています。

なぜ石油化学が主流なのか

石油由来のナフサは、そのままエチレンセンターの原料として利用できるため製造コストが比較的低くなります。

一方、石炭から同じ製品を作る場合はガス化や合成など複数の工程が必要となり、設備投資やエネルギー消費が増加します。

  • 設備が大規模になる
  • エネルギー消費が多い
  • CO2排出量が増える
  • 製造コストが高くなる

このため、石油が利用できる地域では石油化学が優位となっています。

まとめ

石炭と水からナフサ相当の炭化水素やエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエンなどを製造することは技術的に可能です。実際に石炭ガス化、メタノール合成、MTO法、フィッシャー・トロプシュ法などの技術は実用化されています。

しかし、石油由来製品と比べるとコストやCO2排出量の面で不利な場合が多く、現在は特殊な事情がある国や地域を除いて主流ではありません。原発の再稼働は電力供給面で一定の支援となる可能性がありますが、石炭化学そのものの実現可否を左右する要因ではなく、最終的には経済性と環境性が重要な判断基準となります。

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