微分方程式を学んでいると、「全微分方程式」と「完全微分方程式」というよく似た用語が登場します。どちらも関数の全微分に関係していますが、厳密には意味が異なります。この記事では、それぞれの定義や違い、判定方法、実際の解法との関係をわかりやすく整理します。
全微分とは何か
まず理解しておきたいのが「全微分」です。
2変数関数F(x,y)があるとき、その全微分は次の形で表されます。
dF=(∂F/∂x)dx+(∂F/∂y)dy
例えばF(x,y)=x²+y²なら、全微分は dF=2xdx+2ydy となります。
つまり全微分とは、ある関数の微小変化量を表す式です。
完全微分方程式とは何か
一方で完全微分方程式は、次の形の微分方程式を指します。
M(x,y)dx+N(x,y)dy=0
この式が、ある関数F(x,y)の全微分 dF=0 として表せる場合、その微分方程式を完全微分方程式と呼びます。
つまり完全微分方程式とは、「全微分の形になっている微分方程式」のことです。
言い換えると、全微分は式そのものを指し、完全微分方程式は微分方程式の分類名です。
両者の違いを表で整理
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 全微分 | 関数F(x,y)の変化量を表す式 |
| 完全微分方程式 | 全微分の形で表せる微分方程式 |
例えば dF=0 は全微分から作られた微分方程式です。
そのため「完全微分方程式」は「全微分」を利用して解くことになります。
完全微分方程式の判定方法
微分方程式 Mdx+Ndy=0 が与えられたとき、次の条件を満たせば完全微分方程式です。
∂M/∂y=∂N/∂x
これは混合偏微分の一致条件と呼ばれるものです。
例えば、(2x+y)dx+xdy=0 の場合を考えます。
M=2x+y、N=x なので、∂M/∂y=1、∂N/∂x=1 となり条件を満たします。
したがって、この方程式は完全微分方程式です。
完全微分方程式の解き方
完全微分方程式であることが確認できたら、F(x,y)を求めます。
例えば dF=(2x+y)dx+xdy と考えると、まずMをxについて積分します。
F=x²+xy+C(y)
さらにyで偏微分してN=xと比較すると、C'(y)=0となります。
よってF=x²+xyとなります。
したがって解は次の形です。
x²+xy=C
これが完全微分方程式の一般解になります。
なぜ名前が似ているのか
全微分方程式という表現は、参考書や講義によっては「完全微分方程式」とほぼ同義で使われることがあります。
そのため初学者は混乱しやすいのですが、本来は全微分が数学的な式の概念であり、それを利用して作られた微分方程式が完全微分方程式です。
大学の数学では「exact differential equation」の訳として「完全微分方程式」が一般的に用いられています。
まとめ
全微分とは関数F(x,y)の変化量を表す式であり、完全微分方程式とはその全微分の形で表せる微分方程式のことです。
つまり、全微分は式そのもの、完全微分方程式は微分方程式の種類という違いがあります。完全微分方程式は∂M/∂y=∂N/∂xを満たすかどうかで判定でき、関数F(x,y)を求めることで比較的簡潔に解くことができます。


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