可測関数の証明では、「開集合の逆像が可測集合になる」という定義をどう使えばよいのか悩む人が多いです。
特に、実数値関数から複素数値関数へ拡張するときは、位相空間の連続性と可測性の関係を理解することが重要になります。
この記事では、可測空間 \(X\) 上の実数値可測関数 \(u,v:X\to\mathbb{R}\) に対して、
\(f(x)=u(x)+iv(x)\)
で定義される複素数値関数 \(f:X\to\mathbb{C}\) が可測であることを、「開集合の逆像」の考え方を用いて丁寧に解説します。
まず確認したい可測性の定義
可測空間 \((X,\mathcal{F})\) から位相空間 \(Y\) への写像 \(f:X\to Y\) が可測であるとは、
任意の開集合 \(O\subset Y\) に対して
\[f^{-1}(O)\in\mathcal{F}\]
が成り立つことを言います。
つまり、「開集合の逆像が可測集合になる」という条件です。
今回の目標は、\(Y=\mathbb{C}\) の場合にこの条件を示すことです。
複素数値関数をベクトルとして見る
複素数 \(z=a+ib\) は、実質的には \((a,b)\in\mathbb{R}^2\) と同じです。
したがって、
\[f(x)=u(x)+iv(x)\]
は
\[x\mapsto (u(x),v(x))\]
という \(\mathbb{R}^2\)-値関数とみなせます。
つまり問題は、
「2つの可測関数をまとめた写像が可測か」
という問題になります。
証明の基本アイデア
次の写像を考えます。
\[F:X\to\mathbb{R}^2,\quad F(x)=(u(x),v(x))\]
さらに、
\[\phi:\mathbb{R}^2\to\mathbb{C},\quad \phi(a,b)=a+ib\]
を定義します。
すると
\[f=\phi\circ F\]
となります。
ここで重要なのは、\(\phi\) が連続写像であることです。
実際、\(\mathbb{R}^2\) と \(\mathbb{C}\) は通常のユークリッド位相を入れれば位相同型です。
なぜ F が可測なのか
\(u,v\) が可測であることから、\(F=(u,v)\) は \(\mathbb{R}^2\)-値可測関数になります。
これは、\(\mathbb{R}^2\) の開集合が長方形型集合
\[(a,b)\times(c,d)\]
の可算和で書けることを使うと分かります。
例えば、
\[F^{-1}((a,b)\times(c,d))\]
を計算すると、
\[\{x\in X:u(x)\in(a,b),\ v(x)\in(c,d)\}\]
となります。
これは
\[u^{-1}((a,b))\cap v^{-1}((c,d))\]
と書けます。
\(u,v\) は可測なので、それぞれの逆像は可測集合です。
可測集合は有限個の共通部分で閉じているため、この集合も可測になります。
よって \(F\) は可測です。
連続写像との合成で可測になる
次に、
\[\phi(a,b)=a+ib\]
は連続写像です。
一般に、
「可測写像と連続写像の合成は可測」
という定理があります。
したがって、
\[f=\phi\circ F\]
は可測になります。
これで証明が完成します。
開集合の逆像で実際に考えるとどうなるか
定義通りに書くなら、\(O\subset\mathbb{C}\) を開集合として、
\[f^{-1}(O)=F^{-1}(\phi^{-1}(O))\]
と書けます。
\(\phi\) は連続なので、
\[\phi^{-1}(O)\subset\mathbb{R}^2\]
は開集合です。
さらに \(F\) は可測なので、その開集合の逆像
\[F^{-1}(\phi^{-1}(O))\]
は可測集合になります。
したがって、
\[f^{-1}(O)\in\mathcal{F}\]
が成り立ち、\(f\) は可測です。
この証明で大事なポイント
この問題では、次の3点が非常に重要です。
| ポイント | 意味 |
|---|---|
| \(u,v\) が可測 | 座標ごとの逆像が可測 |
| \(F=(u,v)\) | \(\mathbb{R}^2\)-値可測写像になる |
| \(\phi(a,b)=a+ib\) | 連続写像なので合成で可測性保存 |
特に、「連続写像は開集合の逆像を開集合に送る」という位相空間の基本性質が、可測性の証明で非常に重要になります。
まとめ
実数値可測関数 \(u,v:X\to\mathbb{R}\) に対して、
\[f(x)=u(x)+iv(x)\]
で定義される複素数値関数 \(f:X\to\mathbb{C}\) は可測になります。
証明の流れは、
- \(F=(u,v):X\to\mathbb{R}^2\) を考える
- \(F\) が可測であることを示す
- \(\phi(a,b)=a+ib\) が連続であることを使う
- \(f=\phi\circ F\) より可測性を得る
という構造になります。
可測性と位相の関係では、「開集合の逆像」という考え方が中心になるため、この問題は非常に良い練習問題と言えます。


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