実数係数の多変数多項式環R[X1,…,Xn]から定まる集合F(S)は、すべての多項式が同時に0になる点の集合として定義されます。このような集合は代数幾何学で重要な役割を持つ代数集合と呼ばれ、通常の曲線や図形とは異なる特徴を持っています。この記事では、特にn=2の場合にFがどのような構造を持つのか、なぜ任意の曲線がこの閉集合系に含まれるわけではないのかを解説します。
多項式の零点集合から作られる閉集合系とは
実数係数多項式環R[X1,…,Xn]に対して、集合Sを多項式の集合とすると、F(S)は「Sに含まれるすべての多項式が同時に0になる点の集合」です。
つまり、F(S)={(x1,…,xn)∈R^n | f(x1,…,xn)=0(すべてのf∈S)}となり、多項式方程式の解集合を考えていることになります。
このような集合族は閉集合系の公理を満たします。有限個の和や任意個の共通部分に関して、多項式方程式の解集合として自然に閉じた構造を持つためです。
n=1の場合は余有限位相になる理由
1変数の場合、多項式f(X)の零点は有限個しか存在しません。これは0でない多項式の次数が有限であるためです。
そのため、R上で得られる閉集合は、有限集合または全体Rになります。例えば、f(X)=X^2-1なら零点集合は{-1,1}となります。
したがって、開集合はRから有限集合を除いた形になり、これは余有限位相と一致します。1変数の場合は非常に単純な構造になります。
n=2では閉集合はどのような形になるのか
2変数の場合、零点集合は平面R^2上の図形になります。例えば、f(X,Y)=X^2+Y^2-1の場合、F({f})は単位円になります。
また、複数の多項式を同時に考えることで、曲線同士の交点や有限個の点集合なども表現できます。
このような集合は代数曲線や代数集合と呼ばれます。ただし、重要なのは「平面上のすべての曲線」がこの形で表せるわけではないという点です。
y=sin(x)のグラフが代数集合にならない理由
代表的な例として、集合{(t,sin t)|t∈R}を考えます。この曲線がある多項式f(X,Y)の零点集合に含まれると仮定します。
つまり、f(t,sin t)=0がすべてのtについて成立するとします。ここでfをXについて整理すると、f(X,Y)=Σ[i=0,m]gi(Y)X^iと書けます。
もしm=0ならばf(X,Y)=g0(Y)となります。この場合、g0は1変数多項式なので、g0(sin t)=0を満たすsin tの値は有限個しかありません。しかしsin tは連続的に多くの値を取るため矛盾します。
次数を固定した考察による矛盾
次にm>0の場合を考えます。最高次係数gm(Y)は0でない多項式なので、gm(sin t)≠0となるtを選ぶことができます。
そのようなtをt’とすると、f(X,sin t’)はXについてm次の多項式になります。そのため、この方程式f(X,sin t’)=0の解は有限個しかありません。
しかし、sin(t’+2πn)=sin t’なので、すべての整数nについて、f(t’+2πn,sin t’)=0となります。つまりX=t’+2πnという無限個の解を持つことになり、有限個しか解を持たないという事実と矛盾します。
代数曲線と一般的な曲線の違い
この例から分かるように、代数集合とは多項式方程式によって記述できる非常に特殊な集合です。
円、楕円、放物線、双曲線などは代数曲線ですが、正弦曲線や指数関数のグラフなど、多くの解析的な曲線は代数集合ではありません。
例えば、y=e^xやy=sin xは滑らかで美しい曲線ですが、多項式方程式1つまたは有限個の組み合わせでは表現できません。
代数幾何学におけるFの意味
この閉集合系Fは、代数幾何学で扱うザリスキー位相の考え方につながります。通常の距離による位相では、多くの曲線や点集合が閉集合になります。
しかしザリスキー位相では、多項式で記述できる集合だけが閉集合になります。そのため、通常の図形の感覚とは異なる性質を持ちます。
例えば、実数平面では円や正弦曲線はどちらも曲線ですが、ザリスキー位相では円は閉集合、正弦曲線は閉集合ではないという違いが生じます。
まとめ:n=2の閉集合系は代数的な図形だけを含む
n=2の場合、F(S)として得られる集合は、多項式方程式の解集合、つまり代数集合になります。
円や代数曲線の有限個の和集合などはFに含まれますが、y=sin xのような超越的な曲線は含まれません。これは、多項式が有限次数であることから生じる制約によるものです。
したがって、この閉集合系は「平面上のすべての曲線を扱うもの」ではなく、「多項式によって記述可能な図形だけを扱う構造」と理解すると分かりやすくなります。


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