鉛筆画を練習していると、「ここは本当に影になる場所なのか」と疑問に感じるような部分に陰影が描かれていることがあります。実際の光の当たり方だけを考えると不自然に見える影でも、鉛筆画では立体感や形を伝えるために意図的に加えられている場合があります。この記事では、鉛筆画における陰影の役割や、なぜ見た目では分かりにくい場所にも影を入れるのかを解説します。
鉛筆画の陰影は「日陰を写す」だけではない
現実の物体にできる影には、光が当たらないことで生じる明確な日陰があります。しかし、鉛筆画で描く陰影は、単純に日陰を再現しているだけではありません。
鉛筆画では、物の形や質感、奥行きを見る人に伝えるために、光と影を利用します。そのため、実際にはそれほど暗くない部分でも、立体感を出す目的で少し暗く描くことがあります。
例えば、丸い球体を描く場合、光が当たっている部分と完全な影の部分だけでは平面的に見えてしまいます。その間にある少し暗い部分を表現することで、球体らしい丸みが生まれます。
見本の陰影には「形を説明するための影」が含まれている
鉛筆画の教本で描かれている影には、実際の光による影だけではなく、「この部分はこういう形になっています」と説明するための陰影が含まれています。
これは美術では「明暗による形の表現」と考えられます。画家やデッサンでは、物の輪郭だけでは伝わらない立体感を、明るさの変化によって表現します。
例えば、鼻を描く場合、実際の照明では鼻の横に強い影ができていなくても、少し暗く描くことで鼻の高さや顔の奥行きを表現できます。
鉛筆画で重要なのは光の正確さより明暗のバランス
初心者の場合、「本当にここに影があるのか」ということを気にしすぎることがあります。しかし、デッサンでは光源を完全に再現することだけが目的ではありません。
重要なのは、明るい部分、中間の明るさの部分、暗い部分を適切に配置して、見る人が自然に立体として認識できるようにすることです。
例えば、白い箱を描く場合でも、すべての面を同じ明るさで描くと平面の図形のように見えます。少し暗い面を作ることで、箱の向きや奥行きが伝わります。
「存在する影」と「描くための影」の違い
鉛筆画では、影には大きく分けて二つの役割があります。一つは光によって実際に発生している影、もう一つは形を分かりやすくするために加える表現としての影です。
例えば、リンゴを描く場合、机に落ちる影は実際の影ですが、リンゴの表面にある暗い部分は、光の方向や丸みを表現するための陰影です。
この二つを区別すると、教本の陰影が「間違った影」ではなく、「より分かりやすく見せるための工夫」であることが理解できます。
鉛筆画で陰影を入れるときの考え方
鉛筆画で影を描くときは、「暗い場所を探す」というより、「形を伝えるためにどこを暗くすると自然に見えるか」を考えることが大切です。
まず光の方向を決め、その後で物の丸みや角、重なりを意識して明暗を配置すると、説得力のある絵になります。
例えば、同じコップでも、ただ輪郭だけを描くより、側面を少し暗くし、底の部分に影を加えることで、実際にそこに置かれているような存在感が生まれます。
まとめ
鉛筆画の陰影は、現実の日陰をそのまま写したものではありません。立体感や質感、形の特徴を伝えるために、作者が調整して描いている部分も多くあります。
教本にある「なぜここに影があるのか分からない」という陰影は、光の再現ではなく、見る人に形を理解してもらうための表現であることが多いです。
鉛筆画では、影が本当に存在するかだけでなく、「その影によって物がどう見えるか」を考えることが、自然で立体的な作品につながります。


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