古文の動詞『率る(ゐる)』はワ行上一段活用をする特異な動詞です。なぜナ行変格やサ行変格の規則と異なるのか、また古典文法上の活用分類との関係について解説します。
ワ行上一段活用とは
ワ行上一段活用は、動詞の未然形・連用形・終止形などすべてが、ワ段の語幹に直接上一段の語尾を付ける形で変化する活用です。例えば『率る』は「ゐ、ゐ、ゐる、ゐる、ゐれ、ゐよ」と変化します。
この活用は、『居る(ゐる)』『率る』など限られた動詞に見られる特殊なパターンで、現代語の五段活用や上一段活用とは異なります。
なぜ『死ぬ』のナ行変格と同じ考えにならないのか
ナ行変格活用は『死ぬ』『往ぬ』など限られた動詞に適用され、語幹が母音ではなく子音に終わるため変格的に活用します。一方で『率る』の語幹は『ゐ』という母音で終わるため、ナ行変格の規則は適用されません。
このため、『死ぬ』のようにサ行やナ行の変格活用ではなく、母音語幹に対応する上一段の活用が用いられるのです。
古典文法上の分類
『率る』は古典文法では上一段活用動詞に分類されますが、特殊なワ行上一段という区分に属します。これは平安時代から室町時代にかけて、母音語幹に基づく活用パターンが形成された結果です。
類似の例として、『居る』や『率る』があり、いずれも語幹母音が『い』であり、母音変化を伴わず活用する点で共通しています。
実例と活用形
『率る』の代表的な活用形は以下の通りです。
- 未然形:ゐ
- 連用形:ゐ
- 終止形:ゐる
- 連体形:ゐる
- 已然形:ゐれ
- 命令形:ゐよ
この形からも、ナ行変格とは異なり、語幹母音を保持したまま上一段語尾で変化することが分かります。
まとめ
古文の『率る』がワ行上一段活用であるのは、語幹が母音『ゐ』で終わるためであり、ナ行変格活用とは根本的に活用規則が異なるためです。『死ぬ』のような子音語幹の変格活用とは区別され、古典文法上の特殊な上一段動詞として位置付けられています。


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