チャージポンプ回路は、インダクタを使わずにコンデンサとスイッチング素子だけで電圧を昇圧・反転できる便利な電源回路です。特に小型機器では、シュミットトリガバッファやMOSFET、ダイオードを組み合わせたディスクリート構成のチャージポンプが利用されることがあります。
しかし、回路図だけを参考にして同じような回路を作っても、シミュレーションや実機で期待した負電圧が得られないことがあります。その原因は、発振条件、MOSFETの駆動方法、部品モデル、コンデンサの選定など複数の要素が関係しています。
この記事では、シュミットトリガインバーターを利用したチャージポンプ回路の基本動作と、4.2Vから-7.9Vのような負電圧生成回路で電圧が出ない場合に確認すべきポイントを解説します。
シュミットトリガを使ったチャージポンプ回路の基本構成
ディスクリートチャージポンプでは、まず発振回路によって一定周期のON/OFF信号を作ります。その信号によってMOSFETを高速でスイッチングし、コンデンサに電荷を蓄積して目的の電圧を生成します。
シュミットトリガバッファは、単なるインバーターとしてだけではなく、入力ノイズに強い発振回路を作るためにも利用されます。入力と出力のしきい値にヒステリシスがあるため、RC回路と組み合わせることで安定した矩形波を生成できます。
例えば、コンデンサの充放電によってシュミットトリガの入力電圧が上昇・下降すると、一定の周期で出力が反転します。この信号がMOSFETのゲート駆動信号になります。
負電圧を作る反転チャージポンプの動作原理
負電圧生成に使われるチャージポンプでは、コンデンサをスイッチによって交互に充電・放電させることで入力電圧とは逆方向の電圧を作ります。
基本的な反転チャージポンプでは、まずフライングコンデンサに入力電圧と同じ程度の電圧を蓄えます。その後、スイッチングによってコンデンサの片側をグランド側へ切り替えることで、反対側に負の電圧を発生させます。
理想的には4.2V入力なら約-4V、倍電圧構成なら約-8V近い電圧を得ることができます。しかし、実際にはMOSFETのオン抵抗、ダイオードの順方向電圧、コンデンサのESRなどによって出力電圧は低下します。
シミュレーションで-0.2Vしか出ない主な原因
チャージポンプ回路のシミュレーションでほとんど電圧が出ない場合、最も多い原因はスイッチング動作が正常に行われていないことです。
例えば、MOSFETのゲートに十分な電圧が加わっていない場合、MOSFETは完全にONになりません。特にPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETを組み合わせた回路では、ゲートとソースの電位差で動作するため、単純にゲートへ信号を入力するだけでは不十分な場合があります。
また、使用しているシミュレーターのMOSFETモデルが実際の部品特性を反映していない場合もあります。ZXMC3AM832のような実際のパワーMOSFETを使った回路では、寄生容量やオン抵抗の影響も大きくなります。
MOSFET駆動回路を確認するポイント
チャージポンプの性能を左右する重要な部分がMOSFETのゲート駆動です。高速に完全なON/OFFを繰り返せなければ、コンデンサへ十分な電荷を移動できません。
確認すべきポイントとして、以下があります。
| 確認項目 | 問題になる例 |
|---|---|
| ゲート電圧 | MOSFETが完全にオンしていない |
| 発振周波数 | 高すぎてスイッチングが追いつかない |
| デッドタイム | 上下MOSFETが同時オンして短絡する |
| 負荷条件 | 出力電流不足で電圧低下する |
例えば、数十kHz以上で動作させる場合、シュミットトリガの出力電流だけではMOSFETのゲート容量を十分に充放電できないことがあります。その場合はゲートドライバ回路を追加することで改善できます。
ダイオードとコンデンサの選択も出力電圧に影響する
チャージポンプでは、ダイオードの特性も重要です。ZHCS2000のようなショットキーダイオードは順方向電圧が低く、高速スイッチングに向いています。
一般的なダイオードを使用すると、電圧降下によって出力電圧が大きく低下する可能性があります。特に倍電圧回路では、複数のダイオードの損失が積み重なります。
また、フライングコンデンサや出力コンデンサの容量不足も原因になります。容量が小さい場合、蓄えられる電荷量が不足して負荷を接続した瞬間に電圧が下がります。
実際の基板を解析するときに注意するポイント
リバースエンジニアリングでチャージポンプ回路を解析する場合、部品だけを見るのではなく、信号の流れを確認することが重要です。
例えば、シュミットトリガ出力をオシロスコープで確認し、実際に矩形波が発生しているかを調べます。その後、MOSFETのゲート波形、コンデンサ両端の電圧変化を順番に確認すると、どこで電荷移動が止まっているか判断できます。
市販基板では、単純な回路図には書かれていない抵抗や保護部品、寄生容量を考慮して設計されていることもあります。そのため、部品番号だけでなく周辺回路全体を見ることが大切です。
まとめ
シュミットトリガインバーターを利用したディスクリートチャージポンプは、発振回路、MOSFETスイッチ、ダイオード、コンデンサが正しく連携することで負電圧を生成します。
期待した-7.9Vが得られず-0.2V程度しか出ない場合は、まず発振信号が正常か、MOSFETが完全にスイッチングしているか、コンデンサとダイオードが適切かを確認することが重要です。
特にMOSFETのゲート駆動不足やシミュレーションモデルの違いは、チャージポンプ解析でよくある問題です。回路を段階的に確認することで、実際の基板と同じ動作に近づけることができます。


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