自動車ならタイヤの回転数、航空機ならピトー管を使って速度を測定します。しかし、ISS(国際宇宙ステーション)やスペースシャトルのような宇宙船は、空気も道路もない宇宙空間を飛行しているため、地上の乗り物とは違う方法で速度を把握しています。
宇宙船では、単純に機体に取り付けた速度計で測るのではなく、宇宙空間での位置の変化や天体との関係、搭載センサーなどを利用して速度を計算しています。この記事では、宇宙船がどのように速度を知っているのかを詳しく解説します。
宇宙船には車や飛行機のような速度計はない
地上の乗り物では、周囲の環境を利用して速度を測定します。車ならタイヤの回転数から移動距離を計算し、航空機なら空気の流れによる圧力差をピトー管で測定します。
しかし宇宙空間はほぼ真空です。そのため、航空機のように空気との相対的な速度を測る方法は使えません。また、宇宙船には地面に接するタイヤもないため、自動車のような速度測定も不可能です。
そこで宇宙船では、「自分がどこにいるか」を正確に測定し、その位置の変化から速度を求める方法が中心になります。
宇宙船の速度は位置の変化から計算する
速度とは、一定時間あたりにどれだけ位置が変化したかを表すものです。そのため、宇宙船の位置を連続的に測定できれば、速度を計算できます。
例えば、ある時刻に宇宙船が地球から3万km離れた場所にいて、1時間後に3万2800km離れた場所にいた場合、その差から移動速度を求めることができます。
ISSの場合は、地上の追跡施設や人工衛星からの情報を利用して軌道上の位置を把握しています。位置情報を時間ごとに比較することで、現在の速度を計算しています。
GPSや地上局による位置測定
ISSのような低軌道を飛ぶ宇宙船では、GPSも重要な役割を果たしています。
現在のISSにはGPS受信機が搭載されており、複数のGPS衛星からの電波を受け取ることで、自分の位置を高精度に測定できます。
GPSは本来、地上の位置を測るための仕組みですが、宇宙空間でも利用できます。ただし、GPS衛星より低い軌道を飛ぶISSでは、地球側ではなく宇宙側からGPS信号を利用する形になります。
ドップラー効果を利用した速度測定
宇宙船の速度を測定する方法の一つに、ドップラー効果を利用する方法があります。
ドップラー効果とは、近づいてくる物体から発せられる波の周波数が高くなり、遠ざかる物体では低くなる現象です。救急車のサイレンの音が近づくと高く、遠ざかると低く聞こえるのと同じ仕組みです。
宇宙船と地上局の間で電波を送受信すると、宇宙船の移動によって電波の周波数が変化します。この変化量から宇宙船の速度を計算できます。
特に深宇宙探査機では、このドップラー測定が重要で、惑星探査機の速度や軌道計算にも利用されています。
宇宙船内部では慣性センサーも使われる
宇宙船には、加速度を測定する慣性航法装置(INS)も搭載されています。
これはジャイロセンサーや加速度計を使って、宇宙船がどの方向へどれだけ動いたかを計算する装置です。
例えばロケットがエンジンを噴射すると、その加速度を検出して速度の変化を計算できます。GPSなどの外部情報と組み合わせることで、より正確な航法が可能になります。
宇宙船の速度は何に対して測るのか
宇宙で重要なのは、「何を基準にした速度なのか」という点です。
地上の車なら道路が基準になりますが、宇宙には絶対的に止まっている場所はありません。そのため、速度は地球、太陽、目的地の惑星など、基準となる対象を決めて表します。
例えばISSの速度は、一般的には地球を基準にして約秒速7.7km(時速約2万8000km)と表されます。これは地球の周囲を回る速度であり、太陽を基準にするとさらに大きな速度になります。
スペースシャトルも同じ方法で速度を管理していた
スペースシャトルも、ISSと同じように位置測定や慣性航法装置を利用して飛行速度を把握していました。
打ち上げ時にはロケットエンジンの燃焼状況や加速度を計測し、軌道投入後は慣性航法や地上追跡によって軌道を管理していました。
宇宙船の場合、重要なのは単純な速度の数字だけではなく、「予定した軌道を正確に飛んでいるか」という点です。そのため速度計というより、航法システム全体で状態を把握しています。
まとめ|宇宙船は速度を直接測らず位置と電波から計算している
ISSやスペースシャトルには、自動車の速度計や航空機のピトー管のような単純な速度測定装置はありません。
宇宙船では、GPS、地上局との通信、ドップラー効果、慣性センサーなどを組み合わせ、位置の変化から速度を計算しています。
また宇宙では速度は必ず何かを基準にした相対的な値です。そのため、宇宙船の速度管理では「どれだけ速いか」よりも「正しい軌道を維持できているか」が重要になります。


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