英語圏で生活する自閉症のある人の中には、your・his・her・we・he・sheなどの人称代名詞をあまり使わず、「I」「my」「it」など自分中心の表現を多く使うように見える場合があります。そのため、「人を認識できていないのではないか」と疑問に感じる人もいます。
しかし、人称代名詞の使用の難しさは、必ずしも相手の存在や人間関係を理解していないことを意味するわけではありません。この記事では、自閉症のある人の会話に見られる特徴や、人称表現が難しくなる理由について解説します。
自閉症の人が人称代名詞を使いにくい理由
自閉症のある人の中には、会話の中で「誰が」「誰に対して」「誰のものか」を瞬時に判断して言葉を切り替えることが難しい場合があります。
英語のyour・his・her・theirなどの所有や関係を表す言葉は、話している状況によって意味が変化します。例えば、「your book」は話し相手の本ですが、「his book」と言えば別の男性の本を指します。
このような表現を適切に使うには、会話相手の視点に立ち、場面に応じて情報を整理する必要があります。その処理が負担になる場合、より単純で使いやすい「I」や具体的な名前を使うことがあります。
人称代名詞の使用と他者認識は別の問題
人称代名詞をあまり使わないことは、必ずしも「人の存在を理解していない」「他人を認識できない」という意味ではありません。
例えば、自閉症のある人でも、家族や友人、支援者との関係を理解していたり、相手の好き嫌いや行動パターンを覚えていたりすることがあります。
言葉による表現方法と、頭の中で人を理解している能力は別々に考える必要があります。会話で「彼が」「彼女が」と言えなくても、実際には相手との関係性を理解している場合があります。
英語の人称表現は自閉症の人にとって難しい場合がある
英語では、主語や所有を明確にする必要があります。そのため、会話では常に「誰が行ったのか」「誰の物なのか」を判断して表現する必要があります。
例えば、「Tom told Jim that he made it」という文章では、「he」がTomなのかJimなのかによって意味が変わります。このような代名詞の指す対象を理解することは、言語能力だけでなく状況理解も必要になります。
自閉症のある人の中には、このような曖昧な表現よりも、「Tom made it」「Jim talked」など、具体的な名前を使った方が理解しやすく、伝えやすい場合があります。
会話が断片的に聞こえる理由
自閉症のある人の会話では、出来事や情報を短い言葉で並べるような話し方になることがあります。
例えば、「Tom」「Jim talking」「I saw」など、出来事の一部分だけを伝えるように聞こえる場合があります。しかし本人の中では、その言葉の中に状況や背景が含まれていることがあります。
支援者が話を整理しながら、「つまりTomさんとJimさんが話しているところを見たということ?」のように確認することで、本人が伝えたかった内容を引き出せる場合があります。
自閉症の人との会話では具体的な表現が役立つ
人称代名詞や曖昧な表現が難しい場合は、具体的な名前や状況を使うことでコミュニケーションが円滑になることがあります。
例えば、「彼がそれを作った」ではなく、「トムさんが箱を作った」と伝えることで、誰について話しているのかが明確になります。
また、相手が言葉を省略して話している場合も、否定せずに確認する姿勢が大切です。会話の形が一般的なものと違っていても、伝えたい意図が存在することがあります。
知的発達や言語能力によって特徴は大きく異なる
自閉症は非常に幅の広い特性を持つため、人称代名詞の使い方や会話の特徴は一人ひとり異なります。
知的発達の程度、言語能力、経験、周囲からの支援によっても表現方法は変わります。同じ自閉症という診断があっても、流暢に人称代名詞を使う人もいれば、別の表現方法を好む人もいます。
そのため、「自閉症だから必ず人称を使えない」と考えるのではなく、その人がどのような方法で情報を整理し、伝えやすいかを見ることが重要です。
まとめ|人称表現の難しさは人の理解不足とは限らない
自閉症のある人がyour・his・her・we・he・sheなどの人称代名詞をあまり使わない場合、それは必ずしも人を認識できていないことを意味しません。
人称表現には、相手の視点に立つことや状況を整理することが必要であり、その部分が負担になることで、より具体的な表現を選ぶ場合があります。
会話の特徴を見るときは、使う単語だけで判断するのではなく、その人が何を伝えようとしているのか、どのような方法なら理解しやすく表現しやすいのかを考えることが大切です。


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