GPS衛星はなぜ日本をカバーするのに7機も必要?静止衛星では解決できない位置測定の仕組みを解説

天文、宇宙

GPSを使えばスマートフォンで現在地が分かるため、日本のような比較的狭い国土であれば少ない衛星で十分なのではないかと感じる人も多いかもしれません。特に、空の同じ場所にとどまって見える静止衛星を2〜3機配置すれば、日本全体を覆えるように思えます。

しかし、GPSで正確な位置を測定するためには、単に日本上空を電波で覆えばよいわけではありません。衛星の配置や地球との位置関係、測位に必要な衛星数など、さまざまな理由があります。この記事では、GPS衛星が多数必要な理由と静止衛星では代用できない理由について解説します。

GPSで位置を測るには複数の衛星が必要

GPSは、人工衛星から送られてくる電波を利用して、自分の位置を計算するシステムです。受信機は衛星から届く電波の時間差を測り、衛星までの距離を計算します。

しかし、1つの衛星からの距離が分かっただけでは、自分が地球上のどこにいるのか特定できません。例えば、ある衛星から10000km離れているという情報だけでは、その距離を満たす地球上の多数の場所が候補になります。

そのため、通常は複数の衛星から同時に信号を受け取り、それぞれの距離情報を組み合わせて位置を決定します。一般的なGPS測位では、最低でも4機程度の衛星が必要になります。

なぜ日本上空に静止衛星を置くだけでは足りないのか

静止衛星は地球の自転と同じ速度で回るため、地上から見ると常に同じ場所にあるように見えます。しかし、静止軌道は赤道上空約36000kmにしか存在できません。

日本のような北半球の中緯度地域から見ると、赤道上空の静止衛星は南の低い空に見えます。そのため、建物や山などで電波が遮られやすく、都市部や山間部では安定した測位が難しくなります。

また、GPSは単に電波を受け取れればよいのではなく、複数方向から衛星を見ることで測位精度を高めています。1方向にしか衛星がない状態では、距離計算の誤差が大きくなります。

GPS衛星が地球を周回している理由

GPS衛星は静止衛星ではなく、高度約20000kmの中軌道を約12時間で地球を一周しています。

この軌道に多数の衛星を配置することで、地球上のどこにいても複数の衛星が見えるように設計されています。

例えば、日本でGPSを利用している場合でも、頭上に近い位置から電波を送ってくる衛星が複数存在します。そのため、建物の影響を受けにくく、安定した測位が可能になります。

日本をカバーするだけなら7機も必要ないのでは?

「日本だけを対象にするなら少ない衛星でよいのでは」という疑問は自然ですが、GPSはもともと世界全体で利用するために作られたシステムです。

アメリカのGPSだけでも地球全体をカバーするために約30機前後の衛星が運用されています。日本だけを見る場合でも、常に複数衛星が見える状態を維持するには、単純に数機を日本上空へ置くだけでは不十分です。

また、衛星は故障する可能性があり、軌道修正やメンテナンスも必要です。そのため、必要最低限の数ではなく、余裕を持った衛星数で運用されています。

日本独自の準天頂衛星「みちびき」が多数必要な理由

日本ではGPSを補完するために、準天頂衛星システム「みちびき」が運用されています。

準天頂衛星は、日本付近から見ると常に天頂付近を通るような軌道を取ります。これは、ビルや山の多い日本でGPSの弱点を補うためです。

ただし、1機だけでは常に日本上空にいることはできません。衛星は地球の周りを移動するため、複数機を組み合わせることで、常に高い位置から電波を届けられるようにしています。

天候によってGPSが使えなくなることはあるのか

GPSの電波は宇宙から届くため、大雨や曇りだけで完全に利用できなくなることは通常ありません。

GPS衛星の電波は雲や雨をある程度通過できます。ただし、大気の状態による電波の遅れや、建物・地形による遮蔽のほうが大きな問題になります。

そのため、衛星を増やす目的は主に天候対策ではなく、常に複数の衛星を見える状態にして測位精度と安定性を高めることにあります。

まとめ|GPS衛星が多いのは日本を覆うためではなく正確な測位のため

GPS衛星が多数必要なのは、日本列島を電波で覆うためだけではありません。正確な位置を計算するには複数の衛星から同時に信号を受け取る必要があります。

静止衛星を数機置く方法では、衛星が見える方向が限られ、測位精度や安定性に問題が生じます。そのため、地球を周回する多数の衛星によって世界中をカバーする仕組みが採用されています。

GPSや日本の準天頂衛星システムは、単純な電波の届く範囲ではなく、正確な位置測定という目的から考えられた高度な衛星ネットワークなのです。

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