建築基準法上の「非常用の進入口に代わる開口部(代替進入口)」を計画するとき、判断に迷いやすいのが「幅75cm以上・高さ1.2m以上」という寸法をどこからどこまで測るのかという点です。建築躯体に設けた開口そのものが基準を満たしていても、実際にはサッシや障子、手すりなどによって人が通過できる部分は小さくなることがあります。
代替進入口は、火災などの際に消防隊が屋外から建築物へ進入するための開口部です。その目的を考えると、単なる図面上の壁開口寸法ではなく、実際に進入できる有効な開口寸法を確認することが重要です。ここでは建築基準法施行令の規定と自治体の取扱い例を踏まえて整理します。
非常用侵入口の「代替進入口」とは
建築基準法施行令第126条の6では、一定の建築物について非常用の進入口を設けることを求めています。一方、一定の条件を満たす窓その他の開口部を設ける場合などには、非常用進入口そのものを設けないことができる規定があります。一般に、この開口部が「代替進入口」「非常用進入口に代わる開口部」などと呼ばれています。
同条では、対象となる開口部について「直径1m以上の円が内接することができるもの」または「幅75cm以上かつ高さ1.2m以上」のものとしています。さらに、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないことも条件です。
つまり重要なのは、壁に75cm×1.2mの穴が設計されているかだけではありません。消防活動において屋外から進入可能な開口部として機能することまで含めて検討する必要があります。
幅75cm・高さ1.2mは基本的に「有効寸法」で考える
幅75cm以上・高さ1.2m以上については、サッシを取り付ける前の躯体開口寸法ではなく、実際に進入に利用できる有効開口寸法として確認するのが基本です。自治体の建築基準法取扱いでも、この考え方が具体的に示されています。
例えば大阪市の建築基準法取扱いでは、「非常用の進入口に代わる開口部の有効幅及び高さ」として、幅75cm以上・高さ1.2m以上などの寸法の取り方が示されています。京都市の取扱いでも、図示された寸法について「すべて有効寸法」と明記されています。
そのため、躯体の開口が幅80cmあったとしても、サッシ枠などによって実際の有効幅が73cmしか確保できなければ、「躯体開口が80cmだから75cm以上を満たす」と単純に判断するのは適切ではありません。
サッシがある窓ではどこを測るのか
サッシ窓の場合に確認したいのは、消防隊が進入するときに実際に確保できる開口です。サッシ枠、障子、方立など、通常の状態または認められた操作・破壊方法を踏まえて進入時に残る部分を考慮します。
例えば、引違い窓はサッシ全体の外形幅と、片側を開けたときに人が通れる幅が同じではありません。幅1.5m程度のサッシだからといって、そのまま「75cm以上の開口がある」と判断できるとは限らず、実際の有効開口をサッシ図などから確認する必要があります。
京都市の取扱いでは、クレセント付きの窓について、ガラスを部分的に破壊してクレセントを解錠することで進入できるものとする場合、有効寸法はクレセント解錠後の開口寸法とする考え方が示されています。したがって、サッシ等を無視した壁の開口寸法だけで判断するものではないことが分かります。[参照]
具体例で考えると分かりやすい
例えば、設計図上の躯体開口が幅80cm、高さ130cmだったとします。一見すると幅75cm、高さ120cmを超えているため、基準を満たしているように見えます。
しかし、サッシを施工した結果、実際に消防隊が進入できる有効開口が幅72cm、高さ123cmになったとします。この場合、高さは確保できていても、幅75cmという条件を満たしていないことになります。
逆に、サッシを開放した状態など、認められる進入方法によって有効幅75cm以上、高さ1.2m以上が確保できるのであれば、その寸法条件については適合を検討できます。なお、施行令では別の形状として「直径1m以上の円が内接できるもの」も規定されているため、75cm×1.2mだけが唯一の選択肢ではありません。
寸法だけでなく進入を妨げるものにも注意する
代替進入口は、寸法だけ満たせばよいわけではありません。建築基準法施行令第126条の6では、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しない開口部であることが求められています。
そのため、防犯格子、看板、広告物、手すり、庇などがある場合には、それらが消防隊の進入を妨げないかについても確認が必要です。京都市の取扱いでも、進入の障害となる広告物・看板、日除け・雨除け、ネオン管などについて注意事項が示されています。
設計段階では「窓の大きさ」だけを見るのではなく、サッシの開放形式、ガラスの種類、クレセント、手すり、外部の障害物などを含めて確認すると、施工後に代替進入口として認められないという問題を防ぎやすくなります。
自治体や確認検査機関による取扱いも確認する
建築基準法や施行令は全国共通ですが、具体的な寸法の測定方法やサッシ・ガラスの取扱いについて、特定行政庁が取扱基準や質疑応答を定めている場合があります。そのため、実際の建築確認では計画地を管轄する特定行政庁や指定確認検査機関への確認が重要です。
大阪市でも「非常用の進入口に代わる開口部の有効幅及び高さ」について独自の取扱い資料を公開しており、幅75cm以上、高さ1.2m以上などを有効寸法として図示しています。[参照]
特に特殊なサッシ、FIX窓、複層ガラス、防犯ガラス、手すり付きの窓などを代替進入口に利用する計画では、設計を確定する前に行政庁や確認検査機関へ相談しておくと安全です。
まとめ|代替進入口は躯体寸法ではなく実際の有効開口を確認する
非常用進入口に代わる開口部の「幅75cm以上・高さ1.2m以上」は、基本的に消防隊が進入できる有効な開口寸法として考える必要があります。したがって、サッシ等がはまっていない状態の躯体開口だけを測定し、その寸法だけで適合を判断する考え方には注意が必要です。
サッシを取り付けた後、認められる開放・解錠等の状態でどれだけの有効開口を確保できるのかを確認することがポイントです。また、格子や手すりなど進入を妨げる設備についても同時に検討します。
最終的な適否は建物や窓の仕様、計画地の行政上の取扱いによって判断が必要になるため、実施設計や建築確認では、サッシ姿図や有効開口寸法が分かる資料を用意したうえで、所管の特定行政庁または指定確認検査機関に確認するのが確実です。


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