MAS(Modified Ashworth Scale)の1/2可動域・全可動域とは?筋緊張評価で見る範囲と考え方を解説

ヒト

リハビリテーション領域で広く使用されるMAS(Modified Ashworth Scale)は、痙縮などの筋緊張亢進を評価する代表的な指標です。しかし、評価基準に出てくる「1/2可動域」や「全可動域」が何を指しているのか、臨床実習や勉強中に迷う方は少なくありません。

特に脳卒中後の患者さんでは、関節可動域制限が筋緊張によるものなのか、整形外科的な制限なのかを考える必要があります。そのため、どの範囲を評価対象にするのかを理解することが重要です。

この記事では、MASにおける可動域の考え方や、実際の評価時にどのように判断するのかをわかりやすく解説します。

MAS(Modified Ashworth Scale)とは何を評価する検査なのか

MASは、主に脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経疾患でみられる痙縮(筋緊張亢進)の程度を評価する方法です。

評価では、検者が対象となる関節を一定速度で他動的に動かし、その際に感じられる抵抗感を0〜4(または1+を含む)の段階で評価します。

重要なのは、MASは筋力や関節可動域そのものを測定する検査ではなく、「他動運動時に感じる筋緊張による抵抗」を評価しているという点です。

そのため、評価時には関節拘縮や疼痛など、筋緊張以外の要因による制限をできるだけ区別する必要があります。

MASでいう「全可動域」と「1/2可動域」の意味

MASの評価基準にある「全可動域」や「1/2可動域」は、基本的にはその関節が動く範囲を基準にした表現です。

ここでいう可動域とは、標準的な参考可動域だけを指すのではなく、評価対象となる患者さんの関節で実際に動かせる範囲を考慮します。

例えば、肘関節であれば一般的には屈曲145度、伸展0度程度が目安になりますが、患者さんごとに筋緊張や拘縮によって動く範囲は異なります。

つまり、MASでは「正常な人の可動域」を無理に当てはめるのではなく、その患者さんにおける評価可能な範囲の中で筋緊張による抵抗を確認します。

筋緊張によって肘伸展が-30度の場合の考え方

例えば、脳卒中患者さんで肘伸展が-30度(完全伸展できず30度屈曲位までしか伸びない状態)だった場合を考えます。

この場合、評価対象となる可動範囲は基本的には患者さんが実際に動かせる範囲になります。そのため、単純に0〜145度という正常可動域全体を評価するという考え方ではありません。

つまり、この患者さんの場合は、現在可能な肘関節の範囲である屈曲位30度から屈曲145度までの間で、他動的に動かした際の抵抗感を評価します。

ただし、ここで注意したいのは、-30度の制限が本当に痙縮によるものなのか、それとも関節拘縮や疼痛によるものなのかを判断することです。

MAS評価では筋緊張による制限と関節拘縮を分けて考える

脳卒中患者さんでは、筋緊張亢進によって関節が動かしにくくなることがあります。しかし、長期間の不動や姿勢保持によって関節そのものが硬くなる拘縮も起こります。

例えば、肘関節が伸びない患者さんの場合、急速に動かした時だけ強い抵抗が出るなら痙縮の影響が考えられます。一方で、ゆっくり動かしても最後まで伸びない場合は拘縮の可能性があります。

MASは速度依存性の筋緊張を評価する検査なので、単純に「動かない角度」を評価しているわけではありません。

そのため、評価前には関節可動域測定や姿勢観察などを行い、何が動きを制限しているのかを考えることが大切です。

臨床でMASを実施するときのポイント

MASを行う際には、対象筋を明確にし、患者さんをリラックスした状態にしてから評価することが重要です。

例えば肘屈筋群の痙縮を見る場合は、肘関節を伸展方向へ動かし、その途中で急激な引っかかりや抵抗の増加があるかを確認します。

また、評価速度によって結果が変わるため、検者ごとの差を少なくするためにも一定の速度で行うことが求められます。

実習や国家試験対策では、MASの点数だけを暗記するのではなく、「何の抵抗を見ているのか」「どの範囲で評価しているのか」という考え方を理解すると臨床で役立ちます。

まとめ|MASの可動域は患者自身の状態を基準に考える

MASにおける「1/2可動域」や「全可動域」は、単純に正常者の参考可動域を指すものではなく、基本的には評価対象となる患者さんの実際の可動範囲を基準に考えます。

筋緊張によって肘伸展が-30度の場合も、正常範囲である0〜145度すべてを見るのではなく、その患者さんが動かせる範囲内で筋緊張による抵抗を評価します。

ただし、可動域制限の原因が痙縮なのか拘縮なのかを見極めることが重要です。MASは単なる可動域評価ではなく、筋緊張による抵抗を評価する検査であることを理解しておくと、より正確な評価につながります。

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