なぜケッペンの気候区分に亜熱帯気候がないのか?亜熱帯という概念が後から作られた理由を解説

地学

地理学でよく使われる「亜熱帯」という言葉ですが、実は世界的に有名なケッペンの気候区分には独立した「亜熱帯気候」という分類は存在しません。そのため、現在使われている亜熱帯という言葉は、研究分野や地域によって少し異なる意味で使われています。

では、なぜケッペンは亜熱帯を気候区分として設定しなかったのでしょうか。この記事では、ケッペンの気候区分の考え方、亜熱帯という概念が後世に発展した理由、そして現在の亜熱帯の定義が統一されにくい背景について解説します。

ケッペンの気候区分とは何か

ケッペンの気候区分は、ドイツの気候学者ウラジミール・ペーター・ケッペンが20世紀初頭に作成した気候分類です。現在でも世界の気候を分類する代表的な方法として広く利用されています。

ケッペンは気候を単純な気温だけで分類するのではなく、植物の分布と気温・降水量の関係を重視しました。つまり、自然環境としてどのような植生が成立するかを基準に気候帯を分けたのです。

主な分類は以下の5つです。

  • A:熱帯気候
  • B:乾燥帯気候
  • C:温帯気候
  • D:冷帯(亜寒帯)気候
  • E:寒帯気候

この分類を見ると分かるように、「亜熱帯」という独立した区分は存在しません。

ケッペンが亜熱帯を設定しなかった理由

ケッペンが亜熱帯を独立した気候帯として扱わなかった大きな理由は、彼の分類目的が「植物の分布に対応した世界的な気候区分」を作ることだったためです。

現在一般的に亜熱帯と呼ばれる地域は、ケッペンの分類では主にC(温帯)や一部のA(熱帯)に含まれます。例えば、地中海性気候(Cs)や温暖湿潤気候(Cfa)は、現在では亜熱帯地域として紹介されることがありますが、ケッペン自身はこれらを温帯気候の一部として扱いました。

ケッペンにとって重要だったのは、「熱帯と温帯の中間」という人間的な感覚ではなく、その地域でどのような植物が生育できるかという自然科学的な区分でした。

亜熱帯という言葉が後から広まった理由

「亜熱帯」という言葉は、気候を説明する上で便利だったため、後世の地理学者や気象学者によって広く使われるようになりました。

熱帯ほど一年中高温ではないものの、温帯よりも暖かい地域を説明する際に、「熱帯に近い温帯」という意味で亜熱帯という表現が使われるようになったのです。

例えば、日本では沖縄や奄美地方を亜熱帯地域と呼ぶことがあります。これは年間を通じて温暖で、熱帯性の植物も一部見られるためです。しかし、ケッペンの分類では沖縄の多くは温帯(C)に分類されます。

亜熱帯の基準が統一されにくい理由

亜熱帯が学術的に明確な1つの基準を持ちにくい理由は、そもそもケッペンのような世界共通の正式な気候帯として定義されていないためです。

研究者によって、亜熱帯の判断基準には以下のような違いがあります。

基準 考え方
緯度 おおよそ北緯・南緯20〜40度付近を指す
気温 冬でも一定以上の暖かさがある地域
植生 亜熱帯性植物が生育する地域
季節変化 冬季が短く夏季が長い地域

例えば、緯度だけで見ると砂漠地域も亜熱帯に含まれる場合があります。しかし、一般的なイメージの亜熱帯とは大きく異なるため、気温や植生など別の条件を組み合わせて考える必要があります。

現在の気候学では亜熱帯をどのように扱うのか

現代の気候学では、亜熱帯という言葉は補助的な地域区分として使われることが多く、ケッペンのような正式な分類体系とは別に扱われています。

例えば、大気循環の研究では「亜熱帯高圧帯」という用語があります。これは緯度約20〜30度付近に形成される高気圧帯を指し、乾燥地域の形成などに関係しています。

一方で、生活や観光分野では「温暖な地域」という意味で亜熱帯という言葉が使われることもあります。このように、同じ亜熱帯でも使われる分野によって意味が変化します。

ケッペンの分類と亜熱帯を理解するポイント

ケッペンが亜熱帯を無視したわけではなく、彼の分類体系では「亜熱帯」という区切りを必要としなかったと考える方が適切です。

ケッペンは気候を連続的なものとして捉えており、自然環境の変化を無理に「熱帯」「亜熱帯」「温帯」と三分割する考え方ではありませんでした。

そのため、現在の亜熱帯という概念は、ケッペンの分類を補う形で発展した便利な地域表現と考えると理解しやすくなります。

まとめ

ケッペンの気候区分に亜熱帯気候が存在しない理由は、ケッペンが植物分布を基準に世界の気候を分類し、熱帯と温帯の間に独立した区分を設ける必要性を感じなかったためです。

現在使われている亜熱帯という言葉は、後世の研究者や社会の中で発展した概念であり、緯度・気温・植生などによって定義が変わります。

つまり、亜熱帯は「存在しない気候」ではなく、ケッペンの分類とは別の目的で発達した、現代でも便利に使われている地域概念だと理解するとよいでしょう。

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