単結晶金属に外力を加えたとき、どのすべり系で塑性変形が起こりやすいかを判断するためにシュミット因子が用いられます。特に鉄などの結晶材料では、引張軸とすべり面、すべり方向の角度を正しく選ぶことが計算の重要なポイントになります。
この記事では、単結晶の鉄に引張応力を加えた場合のせん断応力の求め方について、シュミット因子で使用する角度がどこを指すのか、具体的な考え方を解説します。
シュミット因子とは何を表しているのか
シュミット因子とは、外部から加えた引張応力のうち、結晶の特定のすべり系に作用するせん断応力の割合を表す値です。
せん断応力τは次の式で求められます。
τ=σm=σcosφcosλ
ここで、σは加えた引張応力、φは引張軸とすべり面法線の角度、λは引張軸とすべり方向の角度です。
つまり、シュミット因子mはcosφcosλで表され、どの角度を使うかが計算結果を決める重要な部分になります。
シュミット因子で使う2つの角度の意味
シュミット因子で使用する角度は、問題文に出てくる面指数と方向指数から判断します。
1つ目の角度φは「引張方向」と「すべり面の法線方向」の角度です。注意点として、すべり面そのものとの角度ではなく、すべり面に垂直な方向との角度を使います。
2つ目の角度λは「引張方向」と「すべり方向」の角度です。これは方向指数同士の角度として求めます。
問題の条件から角度を決める方法
今回の条件では、鉄結晶の引張方向が[010]、せん断応力を求める面が(110)、方向が[-111]と与えられています。
この場合、すべり系は「(110)面上の[-111]方向」と考えます。そしてシュミット因子で使う角度は以下のようになります。
| 記号 | 意味 | 今回使うもの |
|---|---|---|
| φ | 引張方向とすべり面法線の角度 | [010]と(110)の法線[110]の角度 |
| λ | 引張方向とすべり方向の角度 | [010]と[-111]の角度 |
つまり、(110)面との角度を直接使うのではなく、(110)面に垂直な[110]方向との角度を使うことがポイントです。
具体的な角度計算
まずφを求めます。立方晶では方向指数の内積を利用できます。
[010]と[110]の内積は、0×1+1×1+0×0=1です。
それぞれの大きさは、|[010]|=1、|[110]|=√2なので、
cosφ=1/√2
となり、φ=45°です。
次にλを求めます。[010]と[-111]の内積は、0×(-1)+1×1+0×1=1です。
|[-111]|=√3なので、
cosλ=1/√3
となります。
せん断応力の計算
与えられた引張応力は100MPaなので、シュミット因子は以下になります。
m=cos45°×cosλ=(1/√2)×(1/√3)=1/√6
したがって、せん断応力は
τ=100×1/√6
となります。
計算すると、
τ≒40.8MPa
となります。
この値が、指定された(110)面の[-111]方向に作用する分解せん断応力です。
シュミット因子の角度で迷いやすいポイント
よくある間違いは、すべり面(110)そのものと引張方向[010]の角度をφとしてしまうことです。
φは「面との角度」ではなく、「面の法線との角度」です。結晶面は方向指数では表されないため、面指数から法線方向を読み取る必要があります。
また、λは必ず指定されたすべり方向を使用します。今回なら[-111]方向であり、別の方向指数を勝手に選んではいけません。
まとめ
単結晶鉄のせん断応力をシュミット因子で求める場合、使用する角度は「引張方向とすべり面法線の角度」と「引張方向とすべり方向の角度」です。
今回の例では、引張方向[010]、すべり面(110)、すべり方向[-111]から、φは[010]と[110]の角度、λは[010]と[-111]の角度を使用します。
シュミット因子の計算では、面そのものとの角度ではなく法線方向を見ることが最大のポイントです。この考え方を理解すると、他の結晶方位の問題でも同じ手順で解くことができます。


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