「素数は1番目、2番目、3番目……と番号を付けられるので、無限時間があればすべて書き並べられるのではないか」と考える人は少なくありません。しかし、数学では「無限個のものを数えられること」と「ある時間の中ですべてを書き終えること」は別の概念として扱われます。この記事では、素数全体が可算無限であることと、無限時間による列挙が意味することの違いをわかりやすく解説します。
素数には番号を付けることができる
まず、素数全体は数学的には「可算無限集合」です。つまり、素数を順番に並べて、1番目、2番目、3番目……という番号を対応させることができます。
例えば、素数を小さい順に並べると、2、3、5、7、11、13、17……となります。このとき、2をp(1)、3をp(2)、5をp(3)のように表すことができます。
この性質から、「すべての素数には番号を振れる」という考え自体は正しいです。しかし、このことは「有限の時間内にすべて書き終えられる」という意味ではありません。
可算無限だからといって無限時間で完了するとは限らない
ここで重要なのは、数学における無限には通常の時間のような終点が存在しないという点です。「無限時間後」という表現は、一見すると非常に長い時間の後に何かが完成するように感じますが、数学的には「無限番目」という瞬間は存在しません。
例えば、1秒に1個ずつ素数を書くとします。1秒後には1個、100秒後には100個書けます。しかし、どれだけ時間を伸ばしても、書いた個数は必ず有限個です。
100年後でも、100万年後でも、書き終わった素数の数は有限です。どんな有限の時点を選んでも、その先にはまだ書いていない素数が残ります。
「n分後にn番目の素数を書く」方法ではすべて完成しない理由
質問のように、「n分後にn番目の素数p(n)を求めればよい」という方法を考えることはできます。実際、この方法ならそれぞれの素数は対応する時間に書かれます。
例えば、1分後に2、2分後に3、3分後に5を書くというルールなら、各素数には書かれる時刻が存在します。この意味では、素数を列挙する仕組みは作れます。
しかし問題は、「すべてを書き終える時刻」が存在するかどうかです。nという番号はどこまでも大きくできますが、「最後の番号」はありません。そのため、すべての素数を書き終える最後の瞬間も存在しません。
無限個の作業には完了時点がない場合がある
同じことは、他の無限の例でも確認できます。例えば、0.1秒ごとに数字を書いていくとしても、自然数をすべて書き終える最後の時間はありません。
また、ホテルの部屋が1号室、2号室、3号室……と無限に続く「ヒルベルトホテル」のような思考実験でも、無限個の部屋や人を扱うことはできますが、有限の作業のように「全部終わった」という状態を単純には考えられません。
無限集合の要素を順番に対応させることと、その全要素を時間経過によって完成させることは異なる問題なのです。
「すべての素数を書き並べることができない」の意味
「無限時間において、すべての素数を書き並べることはできない」という主張は、「素数を順番に生成する方法が存在しない」という意味ではありません。
素数を求める公式やアルゴリズムは存在しますし、コンピューターを使えば必要な範囲まで素数を列挙できます。また、数学的には素数列という形で完全に定義することもできます。
ここで否定されているのは、「ある過程を続ければ、どこかの時点で全素数の記述が完成する」という考えです。素数は無限に続くため、その終了地点が存在しないという意味になります。
まとめ|素数は数えられるが、書き終える瞬間は存在しない
素数全体が可算無限であるため、1番目、2番目、3番目という番号を付けることは可能です。しかし、可算無限であることと、無限時間後にすべての作業が完了することは同じではありません。
「n分後にn番目の素数を書く」という方法は、各素数に対応する時間を与えることはできますが、最後に書く素数が存在しないため、完成する瞬間はありません。
無限を考えるときは、「並べられること」と「終わらせられること」を区別することが重要です。この違いを理解すると、素数だけでなく数学におけるさまざまな無限の考え方がより明確になります。


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