母集団の割合から、無作為に選んだ標本の人数や割合がどのくらいになるかを求める問題では、二項分布や正規分布近似がよく利用されます。特に「ある市のA型の割合が40%で、600人を選んだときA型が246人以上になる確率」のような問題は、標本比率の分布を理解する代表的な例です。
このような問題では、二項分布として考えてから正規分布で近似する解き方が一般的ですが、すべての問題で同じ方法が使えるわけではありません。この記事では、二項分布から正規分布近似を利用できる条件や、標本平均の分布を使う場合との違いについて解説します。
この問題が二項分布で表せる理由
市民の中から無作為に600人を選び、その中にA型が何人いるかを考える場合、1人選ぶごとに「A型であるか、A型でないか」という2種類の結果になります。
さらに、各人の血液型が独立していると考えると、この試行を600回繰り返すことになります。そのため、A型の人数Xは二項分布に従います。
母比率をp=0.4、標本数をn=600とすると、Xは次のように表せます。
X〜B(600,0.4)
求めたい確率は、P(X≧246)となります。
二項分布を正規分布で近似する考え方
二項分布は、試行回数が多くなると正規分布で近似できます。これを二項分布の正規近似といいます。
正規近似ができる条件として、一般的にはnpとn(1-p)が十分大きいことを確認します。
- npが十分大きい
- n(1-p)が十分大きい
今回の場合は、np=600×0.4=240、n(1-p)=600×0.6=360となるため、どちらも十分大きく、正規分布による近似が適切です。
平均と分散は以下になります。
平均:np=240
標準偏差:√np(1-p)=√144=12
したがって、Xは平均240、標準偏差12の正規分布で近似できます。
標本平均の分布を使う解き方との関係
質問のように「標本平均の分布を利用する」と考える方法も正しい考え方です。実は二項分布と標本平均の分布は別々のものではなく、同じ現象を違う視点から見ています。
1人ごとのA型かどうかを表す確率変数を考えると、その平均は標本比率になります。そのため、標本比率の分布は中心極限定理によって正規分布に近づきます。
例えば、A型を1、A型以外を0とする変数を600個集めた平均を考えると、その平均はA型の割合になります。この割合が標本平均の分布として扱われます。
二項分布から正規分布にする方法では解けない問題
二項分布を正規分布で近似する方法は非常に便利ですが、条件によっては使えません。
代表的なのは、標本数が少ない場合です。例えば10人だけ選ぶ場合、npやn(1-p)が小さくなり、分布の形が正規分布に近づかないことがあります。
また、成功確率が極端に小さい場合や大きい場合も注意が必要です。
例えば、ある珍しい病気の発生率が0.001%で、100人調査するような場合では、二項分布は正規分布ではなく、ポアソン分布で近似するほうが適切なことがあります。
正規近似ではなく二項分布をそのまま使う場合
標本数が少ない場合や、正確な確率を求めたい場合は、二項分布の式を直接利用します。
二項分布では、次の式を使います。
P(X=k)=nCk p^k(1-p)^(n-k)
ただし、試行回数が大きい場合は計算量が非常に多くなるため、正規近似やコンピューターによる計算が利用されます。
今回の問題を解く時のポイント
今回の血液型の問題では、600人という大きな標本数があり、A型とそれ以外の割合も極端ではありません。そのため、二項分布から正規分布への近似を利用する典型的な問題です。
解く流れとしては以下のようになります。
- 二項分布B(600,0.4)と考える
- 平均240、標準偏差12を求める
- 連続補正を行い246人以上を245.5人以上として考える
- 標準正規分布に変換する
- 正規分布表から確率を求める
この流れを理解しておけば、同じような標本比率の問題にも対応できます。
まとめ
二項分布として考えてから正規分布で近似する方法は、標本数が大きく、成功確率が極端でない場合に利用できる標準的な解法です。
標本平均の分布を使う考え方も同じ原理に基づいており、二項分布と矛盾するものではありません。
ただし、標本数が少ない場合や確率が非常に小さい場合などは正規近似が適切でないことがあります。そのため、問題を見たらまず「二項分布の条件を満たしているか」を確認することが重要です。


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