位相空間では、ハウスドルフ性や列の収束の一意性は密接に関係しています。しかし、一般の位相空間では「収束する点列の極限が一意である」ことと「ハウスドルフ空間である」ことは同値ではありません。この記事では、与えられた性質*を利用して列収束の一意性を示す方法と、性質の違いを理解するための具体例を解説します。
問題に登場する性質*の意味
まず、条件*を整理します。
x,y∈Xでx≠yの場合、任意の高々可算集合Y⊂Xに対して、ある近傍V∈N(x)、W∈N(y)が存在し、
Y∩V∩W=φ
となるという条件です。
これは、2点x,yを近傍で分離するだけでなく、その交わりが可算集合Yと衝突しないように選べるという、ハウスドルフ性より強い条件です。
通常のハウスドルフ空間では、xとyに対してV∩W=φとなる近傍を選べます。しかし性質*では、さらに任意の可算集合を避けることができます。
問1:性質*から収束点列の極限が一意であることを示す
点列{a_n}がxにもyにも収束すると仮定します。そしてx≠yと仮定して矛盾を導きます。
点列の値全体からなる集合を、
Y={a_n|n∈N}
とします。この集合Yは高々可算集合です。
性質*より、x,yに対してある近傍V∈N(x)、W∈N(y)が存在して、
Y∩V∩W=φ
となります。
一方、a_n→xであるため、あるN₁が存在してn≥N₁ならばa_n∈Vとなります。
同様にa_n→yなので、あるN₂が存在してn≥N₂ならばa_n∈Wとなります。
したがって、n≥max(N₁,N₂)ならば、
a_n∈V∩W
となります。
つまり十分大きなnについてa_n∈Y∩V∩Wとなります。
しかし性質*によってY∩V∩W=φでした。これは矛盾です。
よってx≠yは不可能であり、収束点列の極限は一意です。
問2:性質*を満たすがハウスドルフでない空間の例
性質*は一見するとハウスドルフ性より強そうに見えますが、実は問題文の条件だけではハウスドルフ性を直接要求していません。
反例として、非可算集合Xに余有限位相を入れた空間を考えます。
余有限位相とは、空集合と、補集合が有限集合になる集合を開集合とする位相です。
つまり、
O={φ}∪{U⊂X|X\Uが有限}
です。
Xが非可算集合の場合、この空間はハウスドルフではありません。
実際、任意の2つの空でない開集合U,Vは有限個を除いてほとんど全ての点を含むため、必ず交わります。
したがって異なる2点を互いに交わらない近傍で分離できません。
しかし、性質*を確認すると、高々可算集合Yに対しては、Yの外側に十分大きな開集合を選ぶことができます。
Xが非可算なので、Yの補集合は非空であり、さらに2点の近傍を調整することで、Yとの交わりを避けることができます。
このように、可算集合を避ける性質とハウスドルフ性は別物であることが分かります。
問3:列収束の極限は一意だが性質*を満たさない例
次に、列の極限は一意なのに性質*を満たさない空間を考えます。
代表例として、第一可算でないような特殊な位相空間を使うことができます。
例えば、順序数空間のような空間では、点列による収束だけを見ると極限の一意性が成立する場合があります。
しかし、性質*は可算集合を避けるという非常に強い条件なので、必ずしも満たされません。
具体的には、ハウスドルフ空間であるが、可算集合Yに対して近傍の交わりを制御できない空間を考えればよいです。
例えば通常の実数Rはハウスドルフなので点列の極限は一意ですが、性質*は一般には成立しません。
実際、x≠yを選び、Yをxとyの間に密に存在する可算集合として取ると、x,yの近傍の交わりがYを避けるようには選べない場合があります。
ハウスドルフ性と列収束の一意性の違い
位相空間論では、
ハウスドルフ空間 ⇒ 収束する点列の極限は一意
という関係があります。
ただし逆は一般には成立しません。
理由は、点列は可算個の情報しか持たないためです。
ハウスドルフ性は全ての点を近傍で分離する性質ですが、列収束の一意性は点列という限られた対象だけを見ています。
そのため、列だけでは見つけられない位相的な違いが存在します。
まとめ|性質*が保証していること
今回の性質*は、単なるハウスドルフ性よりも強く、可算集合を避けながら2点を分離できる条件です。
問1では、収束する点列の値の集合が可算集合になることを利用し、性質*によって矛盾を導くことで極限の一意性を示します。
一方で、ハウスドルフ性、列収束の一意性、性質*はそれぞれ異なる強さの条件です。位相空間の反例を考える際には、「どの対象を分離できる条件なのか」を意識すると理解しやすくなります。


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