DC-DCコンバーターを選定する際、変換効率だけでなくノイズの影響を考慮しなければならない場合があります。特にアナログ回路や計測機器、通信機器などでは、スイッチング方式のコンバーターが発生する高周波ノイズが問題になることがあります。
入力70V以下、出力35V以下、数A級の電源を必要としながら、スイッチングノイズを避けたい場合には、単純な製品選定だけではなく、リニア方式やノイズ対策を含めた設計検討が必要になります。
スイッチング式ではない降圧DC-DCコンバーターとは
一般的な降圧DC-DCコンバーター(バックコンバーター)は、スイッチング素子を高速でON/OFFすることで電圧を変換します。そのため、高い変換効率を実現できますが、スイッチング周波数によるリップルや電磁ノイズが発生します。
一方、スイッチングを使用しない降圧方式として代表的なのがリニアレギュレーター方式です。これは入力電圧との差分を熱として消費しながら出力電圧を一定に保つ方式です。
例えば70Vを35Vへ下げる場合、35V分の電圧差を熱として処理することになります。そのため、大電流では発熱が大きくなり、一般的な電源用途では効率面で不利になります。
リニア方式で70Vから35V・5Aを作る場合の問題点
入力70V、出力35V、電流5Aの場合、出力電力は約175Wになります。
リニア方式では、入力と出力の差である35Vを熱として消費します。消費電力は次のようになります。
損失電力=(入力電圧-出力電圧)×電流
つまり、(70V-35V)×5A=175Wとなり、出力電力と同じ程度の熱が発生します。
この熱を放熱するには大型ヒートシンクや冷却対策が必要になります。そのため、小型の市販DC-DCコンバーターとしてリニア方式で実現するのは現実的ではない場合があります。
低ノイズが必要な場合に検討される方法
スイッチングノイズを避けたい場合でも、現在ではスイッチング式を完全に避けるのではなく、ノイズを低減する設計が一般的です。
例えば、以下のような対策があります。
- 入力側・出力側にLCフィルターを追加する
- 低ノイズタイプのスイッチング電源を使用する
- シールド付きDC-DCコンバーターを使用する
- 後段にリニアレギュレーターを追加する
実際の電子機器では、高効率なスイッチング方式で大まかに電圧を下げ、その後リニアレギュレーターでノイズを除去する構成がよく使われています。
絶縁型DC-DCコンバーターという選択肢
ノイズ対策や機器保護を目的とする場合、絶縁型DC-DCコンバーターを選ぶ方法もあります。
絶縁型では入力側と出力側が電気的に分離されるため、グランドループや外部ノイズの影響を減らせる場合があります。
ただし、絶縁型も多くの場合は内部でスイッチング動作を行っています。そのため、必要に応じてフィルターやシールドを組み合わせることが重要です。
市販品を探す場合のポイント
70V以下・5A級・35V以下という条件では、産業用DC-DCコンバーターや車載向け電源モジュールなどが候補になります。
選定時には、単純な入力電圧と出力電圧だけでなく、以下の仕様を確認する必要があります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 出力電流 | 5A以上の余裕があるか |
| リップルノイズ | 許容できる電圧変動か |
| EMI特性 | 周辺機器への影響が少ないか |
| 絶縁の有無 | 用途に適しているか |
特に計測器やアナログ回路では、効率よりも出力ノイズや電源安定度を重視した選択が必要になります。
どうしてもスイッチングノイズを避けたい場合の代替案
スイッチング方式が使用できないほどノイズに敏感な回路では、DC-ACインバーターやトランスを利用した電源構成、または大型のリニア電源を検討する場合があります。
例えば研究設備や高精度測定装置では、効率を犠牲にしてでも低ノイズなリニア電源を採用するケースがあります。
ただし、70V・5A級という条件では発熱やサイズが大きくなるため、用途によってはスイッチング方式+フィルターの方が総合的に優れた結果になることもあります。
まとめ
スイッチング式ではない降圧DC-DCコンバーターとしてはリニア方式がありますが、70V入力・35V出力・5Aという条件では大きな発熱が発生するため、実用面での制約があります。
低ノイズが目的の場合は、完全にスイッチングを避けるよりも、低ノイズ型スイッチングコンバーター、LCフィルター、シールド、後段リニアレギュレーターなどを組み合わせる方法が現実的です。
電源選びでは、変換効率だけではなく、使用する機器が求めるノイズレベルや安定性を考慮して最適な方式を選ぶことが重要です。


コメント