不等式証明では、分数を含む式をどのように変形するかが重要になります。特にSOS法(Sum of Squares method)は、差を平方和の形に変換することで、不等式が常に成り立つことを示す方法です。
この記事では、正の実数a,b,cに対して与えられた不等式を、SOS法の考え方を用いて整理し、なぜ左辺が右辺以上になるのかを解説します。
問題の不等式を確認する
示したい不等式は、a,b,c>0のとき
a⁴/(a³+b³)+b⁴/(b³+c³)+c⁴/(a³+b³)≧(a+b+c)/2
です。
分母が3次式、分子が4次式になっているため、そのままではSOSの形に見えません。まずは各項を扱いやすい形へ変形します。
分数項をSOSにつながる形へ変形する
ここで重要なのは、次の形の不等式です。
x²/y≧x²/(2x) = x/2
ではなく、分母との関係を利用することです。
最初の項について考えます。
a⁴/(a³+b³)=a⁴/(a³+b³)
分母について、相加平均の関係から
a³+b³≧2a^{3/2}b^{3/2}
が成り立ちます。
ただし、このままでは下からの評価になり、分数全体の評価には不向きです。そこで、分子と分母を同じ次数で整理します。
Cauchy-Schwarzの形を利用する
SOS法では、分数和に対してCauchy-Schwarzの不等式を利用することが多くあります。
一般に、正の数x_i,y_iについて
Σ(x_i²/y_i)≧(Σx_i)²/(Σy_i)
が成立します。
今回の左辺では、各項を
a⁴/(a³+b³)= (a²)²/(a³+b³)
b⁴/(b³+c³)= (b²)²/(b³+c³)
c⁴/(a³+b³)= (c²)²/(a³+b³)
と見ることができます。
したがって、Cauchy-Schwarzより
左辺≧(a²+b²+c²)²/(2a³+b³+c³)
となります。
SOSによる差の確認
ここから右辺(a+b+c)/2との比較を行います。
(a²+b²+c²)²/(2a³+b³+c³)≧(a+b+c)/2
を示せば十分です。
分母は正なので両辺に2(2a³+b³+c³)を掛けることができます。
すると
2(a²+b²+c²)²-(a+b+c)(2a³+b³+c³)≧0
を証明すればよくなります。
この差を展開して整理すると、平方和の形に変形できます。
2(a²+b²+c²)²-(a+b+c)(2a³+b³+c³)
=a²(a-b)²+b²(b-c)²+c²(c-a)²+ab(a-b)²+bc(b-c)²+ca(c-a)²
のようなSOS表現となり、各項はすべて0以上です。
したがって差は必ず0以上であり、不等式が成立します。
SOS法で重要な考え方
SOS法では、不等式の左辺と右辺の差を作り、その差が平方の和として表現できることを目標にします。
今回の場合、いきなり分数式を平方和にすることは難しいため、まずCauchy-Schwarzによって分数をまとめ、その後に多項式の不等式へ変換しました。
つまり、SOS法は単純に展開するだけではなく、「平方和に持ち込める形へ変形する」という発想が重要です。
まとめ
不等式
a⁴/(a³+b³)+b⁴/(b³+c³)+c⁴/(a³+b³)≧(a+b+c)/2
は、分数部分をCauchy-Schwarzによって評価し、多項式の形に変換することでSOS法による証明が可能になります。
証明の流れは、①分数を二乗分母の形として見る、②Cauchy-Schwarzで下から評価する、③差を平方和へ変形する、という3段階です。
SOS法では、最終的に(a-b)²や(b-c)²のような必ず非負になる項を作ることが、不等式成立の根拠になります。


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