代数学の基本定理とは、「次数が1以上の複素係数多項式は、必ず少なくとも1つの複素数の解を持つ」という数学の重要な定理です。高校数学では当たり前のように複素数を扱いますが、実はこの事実は簡単には証明できず、解析学や複素関数論を利用して初めて厳密に示されます。
この記事では、代数学の基本定理でよく使われる最小値の定理を利用した証明の考え方を中心に、質問で登場するc^n=-1やd^n=iを満たす複素数が存在する理由、そして証明全体の流れを解説します。
代数学の基本定理とは何か
代数学の基本定理は、ドイツの数学者ガウスによって研究された定理で、次のように表現できます。
複素数を係数とするn次多項式f(z)(n≧1)は、必ず複素数aを用いてf(a)=0となる点を持つ。
例えば、実数の範囲ではx²+1=0という方程式には解がありません。しかし複素数まで広げるとx=i、x=-iという2つの解があります。このように複素数の世界では、多項式の解が必ず存在するという性質があります。
証明で使われる最小値の考え方
質問にある証明方法では、多項式f(z)の絶対値|f(z)|²に注目します。複素平面上で|f(z)|²は連続な関数なので、適切な範囲では最小値を持ちます。
そこで、|f(z)|²が最小になる点をaとします。もしf(a)が0でなければ、aの周辺を少し動かしたときに、さらに小さい値を作れるはずだという矛盾を導きます。
つまり、「最小値を取る場所なのに、近くへ移動するともっと小さくできる」という状況が起きるため、最終的にはf(a)=0でなければならないという結論になります。
c^n=-1を満たす複素数cは存在するのか
証明中に登場するc^n=-1という条件は、複素数の性質から必ず満たす数cが存在します。
複素数は極形式で表すことができます。複素数zは、絶対値rと偏角θを使って、z=r(cosθ+i sinθ)と書けます。
-1は複素平面上では絶対値1、角度πの点です。したがって、cを絶対値1、角度π/nの複素数にすれば、n回掛けたときに角度がπとなり、c^n=-1になります。
具体的には、c=cos(π/n)+i sin(π/n)と置けば、ド・モアブルの定理よりc^n=-1が成立します。
d^n=iを満たす複素数dの存在理由
d^n=iについても同じ考え方で証明できます。iは複素平面上で絶対値1、角度π/2の位置にあります。
そのため、dの角度をπ/(2n)に設定すれば、n回掛けたときに角度がπ/2となり、iになります。
つまり、d=cos(π/(2n))+i sin(π/(2n))と置けば、d^n=iが成立します。このように複素数では、任意の角度をn等分できるため、根号に相当する数が必ず存在します。
質問の証明でcとdが必要になる理由
最小値を取る点aで、f(a)が0ではないと仮定すると、a+hやa+chなど少しずつ移動した点での値を調べます。
ここでc^n=-1やd^n=iを利用すると、n次の主要な項の向きや符号を調整できます。その結果、f(a+h)やf(a+dh)の大きさが必ず小さくなる方向を作ることができます。
しかしaは|f(z)|²の最小点なので、それ以上小さくなることはありません。この矛盾によって、最初の仮定f(a)≠0が間違いであると分かります。
証明全体の流れを整理すると
代数学の基本定理の証明では、次のような流れになります。
- 多項式f(z)の絶対値|f(z)|²が最小となる点aを考える
- もしf(a)≠0ならば近くの点へ移動して値を小さくできることを示す
- 移動方向を調整するためにc^n=-1やd^n=iを利用する
- 最小値の性質と矛盾するためf(a)=0となる
この証明は、多項式そのものを直接解くのではなく、「解が存在しないと仮定すると、数学的に不可能なことが起きる」という背理法による証明です。
まとめ|複素数の根の存在が代数学の基本定理を支えている
質問にあるc^n=-1やd^n=iを満たす複素数は、複素数を極形式で考えることで必ず存在することが分かります。
複素数では角度を自由に分割できるため、n乗根は常に存在します。この性質が、代数学の基本定理の証明における重要な道具になります。
最小値の議論と複素数の回転の性質を組み合わせることで、どんな高次多項式でも複素数の解を持つことが証明されます。代数学の基本定理は、代数学と解析学が結びついた非常に美しい定理の一つです。


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