線形代数では、行列の積についてPQ=QPが成り立つ場合があります。この条件を見ると、逆行列の関係なのか、それとも別の意味があるのか疑問に感じることがあります。
しかし、PQ=QPという関係は「行列が交換可能である」という意味であり、逆行列であることとは直接関係ありません。この記事では、PQ=QPの意味、逆行列との違い、そして逆行列ではない行列でもPQ=QPが成立する例について解説します。
PQ=QPが表している意味とは
行列の掛け算では、一般的に掛ける順番を入れ替えると結果が変わります。つまり、通常は、
PQ≠QP
となります。
しかし、一部の行列では、
PQ=QP
が成立します。このような関係を「PとQは可換する(交換可能である)」といいます。
つまり、PQ=QPとは「PとQを掛ける順番を変えても同じ結果になる」という意味であり、逆行列であることを示しているわけではありません。
逆行列とはどのような関係なのか
逆行列とは、ある行列Aに対して、
AA^{-1}=A^{-1}A=I
を満たす行列A^{-1}のことです。
ここでIは単位行列と呼ばれる、行列の掛け算における1のような役割を持つ行列です。
つまり逆行列の条件では、「掛けた結果が単位行列になること」が重要です。一方、PQ=QPでは「掛ける順番を変えても同じになること」が条件なので、そもそもの意味が異なります。
PQ=QPでもPとQが逆行列ではない例
PQ=QPを満たしていても、逆行列ではない例は簡単に作れます。
例えば、
P=2I、Q=3I
という行列を考えます。
このとき、
PQ=(2I)(3I)=6I
QP=(3I)(2I)=6I
となるため、PQ=QPが成立します。
しかし、PとQを掛けても単位行列Iにはなりません。したがって、PとQは互いに逆行列ではありません。
このように、可換する行列は多数存在しますが、逆行列の関係になる行列は限られています。
逆行列同士なら必ずPQ=QPになるのか
ここで注意したいのは、PとQが逆行列の関係であっても、単にPQ=QPという条件とは別の話だということです。
もしQがPの逆行列である場合、
PQ=I
となります。また逆行列の性質から、
QP=I
も成立します。
したがって、逆行列の関係なら結果としてPQ=QPになります。ただし、PQ=QPだからといって逆にPとQが逆行列だとは限りません。
これは数学でよくある「必要条件と十分条件」の違いです。
PQ=QPになる代表的なケース
PQ=QPが成立するケースはいくつかあります。
例えば、単位行列Iはどの行列とも可換します。
A I=I A=A
となるため、IとAでは必ずPQ=QPが成立します。
また、同じ行列同士の場合も、
AA=AA
なので当然可換します。
さらに、ある行列の多項式で表される行列同士なども可換する場合があります。線形代数では、このような可換性は行列の性質を調べる上で重要な概念になります。
行列の可換性と逆行列を混同しないためのポイント
PQ=QPを見たときに重要なのは、「掛ける順番を変えても同じ」という情報しかないということです。
逆行列かどうかを判断するには、
PQ=QP=I
になるかを確認する必要があります。
例えば、PQ=QP=5Iの場合、PとQは可換していますが逆行列ではありません。単位行列になるかどうかが決定的な違いです。
まとめ:PQ=QPは逆行列の条件ではなく可換性を示す
行列PとQについてPQ=QPが成立しても、それだけではPとQが逆行列であるとは言えません。
PQ=QPは「PとQが可換する」という意味であり、逆行列とは「積が単位行列になる関係」です。
逆行列なら必ずPQ=QPになりますが、PQ=QPだから逆行列というわけではありません。この違いを理解しておくと、線形代数の行列計算や証明問題で混乱しにくくなります。


コメント