「1+2+3+4+5+…」という自然数を無限に足し続けると「-1/12になる」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、普通に考えると正の数を足しているのに負の数になるため、直感的には間違いのように感じます。
実はこの話は、通常の意味での無限和ではなく、数学の特殊な拡張によって得られる値です。この記事では、なぜ「1+2+3+…=-1/12」と言われるのか、無限の考え方やπ²/6などの収束する級数との違いについて分かりやすく解説します。
普通の意味では1+2+3+4+…は-1/12ではない
まず重要なのは、通常の数学で考える無限和では、
1+2+3+4+5+…
は無限大に発散します。
なぜなら、途中まで計算した和を考えると、
1+2+3+4+5=15
1から10まで足せば55、100まで足せば5050となり、どんどん大きくなるからです。
つまり、一般的な意味での「無限に足す」という操作では、答えは存在せず、-1/12になることはありません。
したがって、「自然数を無限に足すと-1/12になる」という表現は、普通の足し算としては誤りです。
-1/12という値はどこから出てきたのか
この有名な結果は、リーマンゼータ関数という数学的な関数から出てきます。
ゼータ関数は、
ζ(s)=1/1^s+1/2^s+1/3^s+…
という形で定義されます。
例えば、s=2の場合は、
ζ(2)=1+1/4+1/9+1/16+…
となり、この値は、
π²/6
になります。
しかし、この式はsが1以下になると通常の意味では収束しなくなります。
そこで数学では、解析接続という方法を使ってゼータ関数を拡張します。
その拡張されたゼータ関数で、
ζ(-1)=-1/12
という値が得られます。
この結果を形式的に、
1+2+3+4+…=-1/12
と表現することがあります。
誰が言い出したのか?
「1+2+3+…=-1/12」という結果は、特定の1人が突然考え出したものではありません。
背景には、18世紀から19世紀にかけて発展した無限級数や関数解析の研究があります。
特に、レオンハルト・オイラーは発散級数の扱いやゼータ関数の研究で大きな貢献をしました。
ただし、現代的な意味で厳密にζ(-1)=-1/12を扱う理論は、後の数学者による解析接続の発展によって確立されたものです。
そのため、「オイラーが言った」という説明を見かけることがありますが、現代数学での意味とは少し異なります。
無限だから何でもありになるわけではない
「無限なら自然数と偶数が同じ数になる」という話もありますが、これは無限の種類を正しく理解する必要があります。
例えば、
1,2,3,4,…
と、
2,4,6,8,…
は同じ個数の要素を持ちます。
これは、
n→2n
という対応関係が作れるためです。
しかし、これは「偶数と自然数の数が同じ」という集合の大きさの話であり、
1+2+3+…
の和を計算する話とは別の問題です。
無限には、個数の比較、数列の極限、無限級数の和など、異なる考え方があります。
π²/6になる無限和は本当に正しいのか
一方で、
1+1/4+1/9+1/16+…
は、
π²/6
になります。
これは通常の意味で収束する無限級数なので、正しい数学的な和です。
この場合、途中まで足した値が一定の値に近づきます。
例えば、
1+1/4+1/9+…
をどんどん計算すると、約1.644934…に近づきます。
そして、
π²/6≈1.644934
なので一致します。
このような級数は、普通の意味で「無限に足した結果」と言うことができます。
発散する級数と特殊な値を与える方法の違い
数学では、発散する級数に対しても、特定の規則によって値を割り当てる方法があります。
代表的なものに、ゼータ正則化やラマヌジャン総和法などがあります。
これらは、通常の足し算ではありません。
例えば、物理学では量子場理論などで発散する式を扱う際、こうした正則化の考え方が利用されることがあります。
しかし、「1+2+3+…」を日常的な足し算として計算した答えが-1/12になるわけではありません。
まとめ:-1/12は特殊な数学的意味での値
「1+2+3+4+…=-1/12」という話は、普通の無限和としては正しくありません。自然数を順番に足していけば、その値は無限大に発散します。
一方で、ゼータ関数を解析接続することで得られる特殊な値として、ζ(-1)=-1/12という関係があります。
また、π²/6になる無限和は通常の意味で収束する級数なので、数学的に正しい結果です。
無限の世界では「何を意味する和なのか」を区別することが重要です。発散する級数と収束する級数、そして特殊な拡張による値を混同しないことが、無限を理解するポイントになります。


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