ベクトルの内積では、「あるベクトルと単位ベクトルの内積が、別の線分の長さを表す」という性質が登場します。特に、点Aから直線OBへ垂線を下ろした足をHとすると、OAベクトルとOB方向の単位ベクトルの内積がOHの長さになる理由は、ベクトルの射影という考え方を使うと理解できます。この記事では、図形的な意味から内積の公式まで順番に解説します。
内積はベクトルの長さと向きを表す計算
2つのベクトルOAとOBの内積は、一般的に次の式で表されます。
$$\vec{OA}\cdot\vec{OB}=|OA||OB|\cos\theta$$
ここでθは2つのベクトルが作る角度です。つまり内積とは、単純に長さを掛けるだけではなく、一方のベクトルがもう一方の方向にどれだけ向いているかを考慮した量です。
特に重要なのは、内積の中に含まれるcosθが「ある方向への成分」を表しているという点です。この性質が、垂線の長さとの関係につながります。
垂線の足HはOAベクトルのOB方向への成分を表す
点Aから直線OBに垂線を下ろし、その足をHとします。このとき、OHはOAをOB方向に投影した長さになります。
つまり、OAというベクトルをOBと同じ方向にだけ取り出したものがOHです。このような考え方を「ベクトルの正射影」と呼びます。
例えば、斜めに置いた棒の影を考えると分かりやすくなります。棒そのものの長さがOAで、光を真上から当てたときにできる影がOHです。この影の長さが、特定の方向に対するベクトルの成分になります。
なぜ単位ベクトルとの内積になるのか
OB方向の単位ベクトルを考えます。単位ベクトルとは、長さが1のベクトルです。
OB方向の単位ベクトルを\(\vec{e}\)とすると、内積は次のようになります。
$$\vec{OA}\cdot\vec{e}=|OA||e|\cos\theta$$
単位ベクトルなので、\(|e|=1\)です。そのため、
$$\vec{OA}\cdot\vec{e}=|OA|\cos\theta$$
となります。
ここで、三角形OAHを考えると、cosθは隣の辺と斜辺の比なので、
$$\cos\theta=\frac{OH}{OA}$$
です。これを代入すると、
$$\vec{OA}\cdot\vec{e}=|OA|\times\frac{OH}{OA}=OH$$
となります。
したがって、OAベクトルとOB方向の単位ベクトルとの内積は、OB方向へのOAの成分、つまりOHの長さと等しくなります。
単位ベクトルではなくOBベクトルと内積するとどうなるか
もし単位ベクトルではなく、普通のOBベクトルとの内積を考えると結果は変わります。
この場合は、
$$\vec{OA}\cdot\vec{OB}=|OA||OB|\cos\theta$$
となり、OHの長さそのものではなく、OHにOBの長さを掛けた値になります。
つまり、単位ベクトルを使うことで「方向だけを取り出す」ことができ、内積の結果が純粋な長さとして表れるのです。
ベクトルの内積は射影を求める道具として使える
内積は計算方法だけを見ると単なる掛け算のように感じますが、実際には「ある方向への成分を取り出す」という重要な意味があります。
例えば、物理では力のベクトルを移動方向へ分解するときや、速度の特定方向の成分を求めるときにも内積が利用されます。
今回の例では、OB方向の単位ベクトルとの内積によって、OAがOB方向にどれだけ進んでいるかを求めています。それが図形的には垂線の長さOHとして現れています。
まとめ:単位ベクトルとの内積がOHになる理由
OAベクトルとOB方向の単位ベクトルとの内積がOHの長さになる理由は、内積がベクトルの射影成分を求める計算だからです。
単位ベクトルは長さが1なので、内積の式に含まれる余分な長さの要素が消え、OAのOB方向への成分だけが残ります。その成分が、垂線の足Hによって作られるOHの長さになります。
つまり、内積は「2つのベクトルを掛ける計算」ではなく、「ある方向への影の長さを取り出す方法」と考えると、図形との関係が理解しやすくなります。


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