飽和蒸気圧と全圧の関係|液体の水の圧力を含めない理由をわかりやすく解説

化学

飽和蒸気圧の計算では、「液体と気体が共存している場合、なぜ液体の圧力を全圧に加えないのか」という疑問がよく出てきます。この記事では、気体の分圧、飽和蒸気圧、全圧の考え方を整理しながら、密閉容器内の水と窒素の問題を例に解説します。

気体の圧力と全圧の基本的な考え方

混合気体が入った容器では、それぞれの気体が独立して圧力を持っています。このそれぞれの気体が示す圧力を「分圧」と呼び、混合気体全体の圧力を「全圧」と呼びます。

気体の場合、全圧は各気体の分圧の合計になります。これはドルトンの分圧の法則として知られており、次の式で表されます。

全圧 = 気体Aの分圧 + 気体Bの分圧 + …

今回の問題では、窒素N₂の気体圧力と、水蒸気H₂Oの気体圧力を足して全圧を求めます。

窒素の分圧を求める

まず窒素について考えます。窒素は水のように液体になる成分が存在しないため、入れた物質量をそのまま使って気体の圧力を計算できます。

理想気体の状態方程式PV=nRTを使います。

P=nRT/V

窒素の場合、n=0.010mol、R=8.3×10³Pa・L/mol・K、T=300K、V=8.3Lなので、

P=(0.010×8.3×10³×300)÷8.3=3.0×10³Pa

したがって、窒素の分圧は3.0×10³Paになります。

水蒸気はなぜ物質量から計算した圧力にならないのか

次に水について考えます。水は27℃では液体として存在できるため、水蒸気の量が増えると一定以上の圧力にはなりません。

この一定となる圧力が「飽和蒸気圧」です。27℃における水の飽和蒸気圧は3.6×10³Paなので、水蒸気の分圧は最大でもこの値になります。

もし水0.020molがすべて気体になったと仮定して計算すると、飽和蒸気圧を超えてしまいます。その場合、余分な水蒸気は液体に戻り、気体として存在できる量だけが残ります。

つまり、この容器内では「液体の水」と「水蒸気」が同時に存在し、水蒸気の分圧は3.6×10³Paで保たれます。

液体の水の圧力を全圧に加えない理由

ここで重要なのは、飽和蒸気圧とは「液体の水そのものが押す圧力」ではなく、「水分子が蒸発して気体になった水蒸気が示す圧力」であるという点です。

液体の水は容器の底などに存在していますが、液体部分が気体の圧力として加算されるわけではありません。圧力として測定されるのは、気体分子が容器の壁に衝突することで生じる圧力です。

例えば、水の入ったペットボトルを考えると、水そのものが存在していても、空気中の水蒸気の圧力だけが気体の圧力として扱われます。液体の水の重さや内部の圧力は別の物理量になります。

今回の問題で全圧が6.6×10³Paになる理由

この問題では、窒素の分圧が3.0×10³Pa、水蒸気の分圧が飽和蒸気圧の3.6×10³Paです。

したがって、全圧は以下のようになります。

全圧=3.0×10³Pa+3.6×10³Pa=6.6×10³Pa

液体の水が存在していても、それを圧力として加えることはありません。加える対象は、あくまで気体として存在している成分の分圧だけです。

飽和蒸気圧の問題で注意すべきポイント

飽和蒸気圧が関係する問題では、最初に「入れた液体や気体がすべて気体になれるか」を確認することが重要です。

計算した気体の圧力が飽和蒸気圧より小さい場合は、すべて気体として存在できます。しかし、飽和蒸気圧を超える場合は、余った分が液体になり、気体の圧力は飽和蒸気圧までしか上がりません。

この考え方を理解すると、水だけでなくアルコールなど他の揮発性物質の蒸気圧を扱う問題にも応用できます。

まとめ|全圧に含まれるのは気体成分の圧力だけ

密閉容器内で液体と気体が共存している場合、全圧は存在する気体の分圧の合計で求めます。液体そのものの圧力を加えることはありません。

今回の問題では、水は飽和蒸気圧によって水蒸気の分圧が3.6×10³Paに制限され、窒素の分圧3.0×10³Paと合わせて全圧6.6×10³Paになります。

飽和蒸気圧は「液体が押す圧力」ではなく「液体と平衡状態にある蒸気が示す圧力」であると理解することが、化学計算を解く上で重要なポイントです。

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