コイル(インダクタ)に交流電圧を加えたとき、電圧と電流の関係を理解するには、波形・位相差・フェーザ表示の3つを順番に確認することが重要です。コイルでは抵抗とは異なり、電流が電圧より遅れるという特徴があります。
この記事では、インダクタンスLのコイルにv=V_m sin(ωt)の電圧を印加した場合について、電圧と電流の波形、ベクトル関係、フェーザ表示での表し方をわかりやすく解説します。
コイルに交流電圧を加えたときの基本式
コイルでは、印加される電圧vと流れる電流iの関係は、電磁誘導の法則から次の式で表されます。
v=L\frac{di}{dt}
今回与えられている電圧は、
v=V_m sin(ωt)
です。
この式を電流について求めるため、両辺を積分します。
i=\frac{1}{L}\int vdt
=\frac{1}{L}\int V_m sin(ωt)dt
sin(ωt)を積分すると、-cos(ωt)/ωになるため、
i=-\frac{V_m}{ωL}cos(ωt)
となります。さらに、-cos(ωt)=sin(ωt-π/2)なので、
i=\frac{V_m}{ωL}sin(ωt-π/2)
となります。
① 電圧と電流の波形の関係
求めた電流の式から、電圧と電流の位相関係がわかります。
| 種類 | 式 | 位相 |
|---|---|---|
| 電圧 | v=V_m sin(ωt) | 基準 |
| 電流 | i=I_m sin(ωt-π/2) | 電圧より90°遅れる |
つまり、コイルでは電流は電圧より90°(π/2)遅れて変化します。
波形を書く場合は、電圧を実線、電流を破線にすると、電流の波形は電圧の波形を4分の1周期だけ右側へ移動した形になります。
具体的には、電圧が最大値になる瞬間では電流は0となり、電圧が0になる瞬間で電流が最大値または最小値になります。
コイルで電流が遅れる理由
コイルは電流の変化を妨げる性質を持っています。電流が急に増えたり減ったりすると、コイル内部に逆向きの起電力が発生します。
そのため、電圧を先に加えても、電流はすぐには変化できません。結果として、電圧の変化から遅れて電流が変化することになります。
一方、コンデンサでは逆に電流が電圧より90°進みます。この違いを覚えると交流回路の位相問題を解きやすくなります。
② 電圧ベクトルと電流ベクトルの関係
交流回路では、正弦波を回転するベクトルとして表すフェーザ図を用いることで位相関係を視覚化できます。
今回、電圧を基準にすると、電圧ベクトルVは0°方向を向きます。
V=V∠0°
そして電流は電圧より90°遅れるため、
I=I∠-90°
となります。
したがってフェーザ図では、電圧ベクトルを右向きの実線、電流ベクトルを下向きの破線で描きます。
ベクトルの関係は次のようになります。
| ベクトル | 方向 |
|---|---|
| 電圧V | 0°(右方向) |
| 電流I | -90°(下方向) |
③ フェーザ表示でのIとVの表し方
交流回路では、電圧と電流を複素数で表すフェーザ表示を使用します。
コイルのインピーダンスは、
Z=jωL
です。
交流回路の基本式V=ZIより、
I=\frac{V}{Z}
となるため、
I=\frac{V}{jωL}
となります。
ここで1/j=-jなので、
I=-j\frac{V}{ωL}
となります。
極形式で表すと、
I=\frac{V}{ωL}∠-90°
です。
また電圧側から表すと、
V=jωLI
となり、電圧は電流より90°進んでいることが確認できます。
交流回路で覚えておきたいコイルの特徴
コイルの交流特性をまとめると、以下のようになります。
| 項目 | コイルの場合 |
|---|---|
| インピーダンス | Z=jωL |
| 電流と電圧の関係 | 電流は電圧より90°遅れる |
| リアクタンス | X_L=ωL |
| 電流の大きさ | I=V/(ωL) |
特に試験問題では、「コイルでは電圧が電流より先行する」「電流は90°遅れる」という関係が頻繁に問われます。
フェーザ図を書く際には、まず基準となる電圧または電流を決め、その後に90°ずらしてもう一方を配置すると間違えにくくなります。
まとめ:コイルでは電圧が先、電流が後になる
インダクタンスLのコイルにv=V_m sin(ωt)を印加すると、電流はi=(V_m/ωL)sin(ωt-π/2)となります。
つまり、電流は電圧より90°遅れた波形となり、フェーザ表示では電流ベクトルは電圧ベクトルより-90°の位置になります。
交流回路の問題では、波形・ベクトル図・フェーザ表示を別々に覚えるのではなく、「コイルでは電流が遅れる」という基本原理から考えることで、さまざまな回路に応用できます。


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