本記事では、犬の甲状腺機能低下症において高コレステロール血症がなぜ起こるのか、その生理学的・代謝的な機序について解説します。臨床現場でもよく見られる関連所見を、ホルモン作用の観点から整理します。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(T4・T3)の分泌が低下することで全身の代謝が低下する疾患です。
犬では比較的よく見られ、活動性の低下・体重増加・皮膚被毛の異常などが代表的な症状です。
ホルモン低下により全身のエネルギー代謝が遅くなることが本質です。
甲状腺ホルモンと脂質代謝の関係
甲状腺ホルモンは脂質代謝にも強く関与しており、特にコレステロールの合成・分解・排泄バランスを調整しています。
正常時は肝臓でのLDL受容体発現を促進し、血中コレステロールのクリアランスを高めます。
また胆汁酸への変換を促進し、余剰コレステロールの排泄を助けます。
高コレステロール血症が起こる機序
甲状腺機能低下症では、LDL受容体の発現低下により血中LDLコレステロールの取り込みが減少します。
さらに胆汁酸合成の低下により、コレステロールの排泄経路も弱まります。
結果として、血中コレステロールが蓄積し高コレステロール血症となります。
代謝全体の低下による影響
甲状腺ホルモン低下は脂質だけでなく、基礎代謝全体を低下させます。
そのため脂肪分解(リポリシス)も抑制され、脂質が体内に蓄積しやすくなります。
この全身的な代謝低下も高脂血症の一因となります。
臨床的な意義
犬の甲状腺機能低下症では、高コレステロール血症は重要な補助診断所見の一つです。
血液検査で脂質異常が見られた場合、甲状腺機能評価が推奨されることがあります。
ただし他の疾患でも脂質異常は起こるため、総合的な診断が必要です。
まとめ
甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下によりLDL受容体の減少と胆汁酸合成の低下が起こります。
これによりコレステロールの取り込みと排泄が低下し、高コレステロール血症が生じます。
脂質代謝全体の低下が関与する典型的な内分泌性代謝異常です。


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