博物館や資料館で奈良時代や平安時代の古文書を見ると、本文とは異なる朱色の文字や記号が書き込まれていることがあります。東京国立博物館などで展示される光明皇后ゆかりの文書や写経にも見られることがあり、「後から修正されたのか」「注釈なのか」と疑問を持つ人も少なくありません。
実はこれらの赤字には、古代から受け継がれてきた校訂や読解補助の文化が関係しています。
朱筆とは何か
古文書や経典で使われる赤色の文字は一般的に「朱筆(しゅひつ)」と呼ばれます。
朱筆は本文と区別しやすいため、訂正や補足、校合結果の記録などに広く利用されてきました。
現代でいう赤ペン添削に近い役割を持っていたと考えると分かりやすいでしょう。
赤字は誤字修正の可能性がある
古代の写経や文書は手書きで複写されていたため、書き間違いや脱字が発生することがありました。
そのため後から校正担当者が本文を確認し、正しい文字を朱筆で書き添えることがあります。
例えば本文の漢字の横に赤字で別の文字が記されている場合は、誤写の修正を示している可能性があります。
校合や校訂の記録である場合も多い
仏教経典や公式文書では、複数の写本を比較して内容を確認する「校合(きょうごう)」が行われました。
校合の際に異なる文字や表記が見つかると、朱筆で注記されることがあります。
展示で見られる「✓」のような記号や赤字は、本文の読みや正しい字形を示す校訂記号である場合もあります。
訓点や読み方を示していることもある
漢文資料では返り点や送り仮名、読み方を示すために朱筆が使われることがあります。
後世の学僧や研究者が学習用に書き加えたケースもあり、必ずしも原作者自身によるものとは限りません。
特に奈良時代や平安時代の資料では、複数の時代にわたって書き込みが加えられていることもあります。
光明皇后関連資料で見られる朱書の特徴
光明皇后ゆかりの写経や文書は、長い年月の間に多くの人々によって保管・研究されてきました。
そのため原文だけでなく、後世の校訂者による朱書や注記が残されていることがあります。
展示ケースでは説明が省略される場合もあるため、一見すると「なぜ赤字があるのか分からない」と感じることも珍しくありません。
古文書研究では朱筆も重要な情報源
研究者にとって朱筆は単なる落書きではなく、資料の伝来や研究史を知るための重要な手掛かりです。
- 誤字訂正の記録
- 校合の結果
- 読み方の補足
- 後世の注釈
- 資料の利用履歴
どの時代の誰が書き込んだのかを分析することで、文書の歴史そのものが見えてくる場合もあります。
まとめ
古文書や写経に見られる朱色の文字は、多くの場合「朱筆」による校訂や注記です。
誤字修正、脱字補足、校合結果の記録、訓点の追加、後世の研究者による注釈など、さまざまな目的で書き加えられてきました。
展示資料で見られる「猶✓→酒」のような表記も、単なる装飾ではなく、本文を正確に伝えるための重要な情報である可能性が高いと考えられます。


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