無限集合の興味深い性質の一つに、「新しい元を1つ追加しても濃度(要素数の大きさ)が変わらない」という事実があります。有限集合ではあり得ない現象ですが、無限集合では自然数全体の集合と自然数全体に1つ元を追加した集合が同じ濃度になります。本記事では、単射や全単射を用いた典型的な証明の考え方と、具体的な構成方法について解説します。
無限集合に元を追加しても濃度が変わらないとは
集合Aが無限集合であり、γをAに含まれない新しい元とします。このとき、AとA∪{γ}の間に全単射が存在することを示せば、両者の濃度は等しいことになります。
有限集合であれば要素数が1増えるため濃度は変化します。しかし無限集合には「ずらし操作」が可能であり、その余地を利用して新しい元を挿入できます。
証明の出発点は自然数からの単射
無限集合Aであることから、自然数全体の集合NからAへの単射f:N→Aが存在します。これは無限集合の基本的な特徴の一つです。
この単射によって、Aの中に自然数列のように並べられる部分集合f(N)が存在することになります。証明ではこの部分集合を利用して要素を1つずつ後ろへずらします。
全単射の構成方法
次の写像g:A→A∪{γ}を定義します。
g(x)=x(x∈A\f(N))、g(f(1))=γ、g(f(n))=f(n-1)(n>1)
これはf(N)上で要素を1つ前へずらし、最初の位置に新しい元γを挿入する操作です。
自然数で例えると、1→γ、2→1、3→2、4→3という対応を作り、それ以外の要素はそのままにしていると考えると理解しやすくなります。
全射性の確認
任意のy∈A∪{γ}を取ります。
y=γならばg(f(1))=γですから原像が存在します。
y∈A\f(N)ならばg(y)=yです。
y=f(n)である場合はg(f(n+1))=f(n)=yとなるため、やはり原像が存在します。
したがってgは全射です。
単射性の確認
g(x)=g(x’)と仮定してx=x’を示します。
証明ではxがf(N)に属する場合と属さない場合に分けて議論します。A\f(N)上ではgは恒等写像なので容易です。
一方、x=f(n)の場合には、n=1とn>1に分けて考えます。n=1なら像はγとなり、γへ写る元はf(1)しか存在しません。
n>1の場合にはg(f(n))=f(n-1)であり、fの単射性から対応する添字が一致することが導かれます。その結果、x=x’が従います。
このようにしてgは単射であることも確認できます。
証明として妥当か
この証明方針は無限集合の濃度論で広く用いられる標準的なアイデアに沿っています。自然数列に対応する部分集合を取り出し、その部分だけをシフトして新しい元を挿入する方法です。
特に全単射を具体的に構成し、その後に全射性と単射性を個別に確認しているため、論理の流れは明確です。
厳密性をさらに高めるなら、場合分けの構造を整理して記述すると読みやすくなりますが、証明の本質的な部分は正しく捉えられています。
まとめ
無限集合Aに新しい元γを1つ追加しても濃度が変わらないことは、AとA∪{γ}の間に全単射を構成することで示せます。
そのためには、自然数からAへの単射を利用してAの中に可算無限部分集合を見つけ、その要素を1つずつずらしてγを挿入します。
有限集合では成立しない性質ですが、無限集合特有の「どこまでも後ろへずらせる」という特徴によって実現される非常に重要な結果です。


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