可逆変化と非可逆変化の全エントロピー変化の違いとは?高温物体と低温物体の熱移動をわかりやすく解説

物理学

熱力学を学んでいると、高温物体と低温物体の間で熱が移動する場合に「可逆変化では全エントロピー変化が0」「非可逆変化では全エントロピー変化が正になる」と説明されます。しかし、なぜそうなるのか、また可逆変化そのものがイメージしにくいと感じる人は少なくありません。本記事では、高温物体と低温物体の熱交換を例に、可逆変化と非可逆変化の違いを直感的に理解できるよう解説します。

エントロピーとは何を表しているのか

エントロピーは簡単に言うと、エネルギーの散らばり具合や状態の取り得る可能性の大きさを表す量です。

熱は自然に高温から低温へ流れますが、その過程でエネルギーはより均一に分散されていきます。この「エネルギーの拡散の度合い」を数値化したものがエントロピーです。

熱力学第二法則では、孤立系全体のエントロピーは減少しないことが知られています。

非可逆変化の場合のエントロピー変化

例えば100℃の金属と20℃の金属を直接接触させたとします。

すると熱は一気に高温側から低温側へ流れ、最終的に両者は同じ温度になります。この熱移動は有限の温度差によって生じるため、自然には逆向きに戻りません。

このような変化を非可逆変化と呼びます。

高温物体のエントロピーは減少しますが、低温物体のエントロピー増加量の方が大きくなります。その結果、系全体のエントロピーは増加します。

項目 高温物体 低温物体 全体
非可逆変化 減少 大きく増加 増加

可逆変化とはどのような状態か

可逆変化は現実には完全には実現できない理想的な変化です。

例えば100℃と20℃の物体を直接接触させる代わりに、99.999℃、99.998℃、99.997℃というように無数の中間温度の熱源を介して、極めて小さな温度差で少しずつ熱を移動させることを考えます。

この場合、各瞬間で温度差がほぼ0であるため、ほんのわずかな条件変更で逆向きの熱移動も可能になります。

これが可逆変化のイメージです。

なぜ可逆変化では全エントロピー変化が0になるのか

可逆変化では熱が温度差ほぼ0の状態で移動するため、高温側が失うエントロピーと低温側が得るエントロピーがちょうど打ち消し合います。

そのため系全体だけでなく、熱源を含めた宇宙全体のエントロピー変化は0になります。

熱力学では可逆変化を基準としてエントロピーの定義が作られているため、この性質は非常に重要です。

項目 高温物体 低温物体 熱源を含む全体
可逆変化 減少 同量増加 0

熱源を含めるかどうかが重要な理由

教科書では「全エントロピー変化」と言う場合に、対象物体だけでなく熱源も含めて考えることがあります。

可逆変化では熱源も含めた全体系のエントロピー変化は0です。

一方、非可逆変化では熱源を含めてもエントロピー生成が起こるため、全体系のエントロピーは必ず増加します。

つまり可逆変化と非可逆変化の本質的な違いは、エントロピー生成があるかどうかにあります。

エントロピー生成という考え方

熱力学では全エントロピー変化を「移動による変化」と「生成されたエントロピー」に分けて考えることができます。

可逆変化ではエントロピー生成量は0です。

しかし有限温度差による熱伝導や摩擦、拡散などの非可逆過程では正のエントロピー生成が発生します。

これが熱力学第二法則の数学的な表現になっています。

まとめ

高温物体と低温物体が直接熱交換する非可逆変化では、低温側のエントロピー増加が高温側の減少を上回るため、全エントロピーは増加します。

一方、可逆変化は無限に小さい温度差を保ちながら熱を移動させる理想的な過程であり、高温側と低温側のエントロピー変化が正確に打ち消し合うため、熱源を含めた全エントロピー変化は0になります。

両者の最も大きな違いは、非可逆変化ではエントロピーが生成されるのに対し、可逆変化ではエントロピー生成が起こらない点にあります。

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