伊勢物語「芥川」の『女のえ得まじかりけるを、年を経てよばいわたりけるを』を文法解説|逆説の「が」と訳される理由

文学、古典

『伊勢物語』第六段「芥川」の冒頭にある「女のえ得まじかりけるを、年を経てよばいわたりけるを、」は、古文を学ぶ上で文法的な解釈が難しい箇所の一つです。特に現代語訳で「〜が」と逆説的に訳される理由や、連体形との関係について疑問を持つ学習者は少なくありません。この記事では、この一文の構造と訳し方について詳しく解説します。

「女のえ得まじかりけるを」の意味を確認する

まず文を区切ると、「女の/え得まじかりけるを/年を経て/よばいわたりけるを」となります。

ここで「え〜打消推量(まじ)」は古文特有の表現で、「とても〜できそうにない」という意味になります。

したがって「女のえ得まじかりけるを」は、「自分のものにすることができそうにない女を」あるいは「手に入れられそうもない女であったのに」という意味になります。

語句 意味
え〜まじ とても〜できそうにない
手に入れる、妻にする
ける 過去・詠嘆の助動詞
接続助詞

逆説の「が」と訳される理由

質問で最も重要なのは、「なぜ『〜が』と逆説的に訳されるのか」という点でしょう。

結論からいうと、この「を」は接続助詞であり、古文では逆接を表す用法があります。

現代語の感覚では「〜を」は目的語を示す助詞ですが、古文では「〜のに」「〜けれども」「〜が」といった逆接の意味を持つことがあります。

つまり「女のえ得まじかりけるを」は、「手に入れられそうもない女であったが」「手に入れられそうもない女なのに」という逆接的な意味合いを含んでいます。

「よばいわたりけるを」の連体形は逆説と関係あるのか

「よばいわたりける」が連体形になっていることに注目するのは良い視点です。

しかし、この箇所を逆説として理解する根拠は、連体形そのものではなく、後ろに続く接続助詞「を」にあります。

古文では連体形+接続助詞「を」という形がよく見られます。この場合の「を」は逆接や順接の関係を表します。

そのため、「もの」を補って「ものを」と解釈する考え方も学習上は有効ですが、実際には接続助詞「を」の働きによって逆接の意味が生じていると考えるのが基本です。

全文の流れから見るとどうなるか

文脈全体を見ると、男は長年求婚していた女性をようやく盗み出して連れ去ります。

つまり「本来なら手に入れられそうもなかった女性だったが、長年通い続けた結果、ついに連れ出した」という展開になります。

この後の物語の劇的な展開を考えると、「〜が」「〜けれども」と訳す方が自然につながります。

したがって、現代語訳で「女で、自分のものにできないだろう女を、長年求婚し続けたが」と訳されるのは、文脈上も適切な処理だといえます。

類似する古文の接続助詞「を」の用法

古文の接続助詞「を」には複数の意味があります。

  • 逆接(〜のに、〜けれども)
  • 順接(〜ので、〜ところ)
  • 単純な接続

例えば「待てど来ぬを」のような表現では、「待っているのに来ない」という逆接になります。

伊勢物語の「芥川」の場合も、この逆接用法として理解すると自然です。

まとめ

『伊勢物語』「芥川」の「女のえ得まじかりけるを、年を経てよばいわたりけるを、」は、「手に入れられそうもない女性であったが、長年通い続けた」という意味に解釈できます。

逆説の「が」と訳される理由は、連体形そのものではなく接続助詞「を」の逆接用法にあります。「ものを」を補う考え方も理解の助けになりますが、文法上は接続助詞「を」の働きとして捉えるのが基本です。古文の助詞は現代語とは異なる働きをするため、文脈と助詞の機能を合わせて読むことが正確な解釈への近道となります。

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