複素関数論における対数・指数法則の落とし穴|logとLogの違いを例で解説

大学数学

実数の世界では当たり前に成立する対数や指数の公式も、複素数の世界では注意が必要です。特に複素関数論では、多価関数であるlogと主値を表すLogを区別しなければなりません。この記事では、複素対数の基本から、よくある4つの等式が成立するかどうかを解説します。

複素対数の「log」と「Log」の違い

複素数z=r(cosθ+isinθ)に対して、複素対数は

log z=ln r+i(θ+2πk)(k∈ℤ)

と定義されます。

これは偏角が無限個存在するため、多価関数になります。

一方で主値対数は

Log z=ln r+iArg z

と定義され、Arg zを-π<Arg z≦πに制限することで一価関数になります。

複素関数論では、この違いが公式の成否を左右します。

(1) log(z²)=2log(z) は正しいか

一般には正しくありません。

例えばz=-1とすると、

log(-1)=i(π+2πk)

より

2log(-1)=2πi+4πki

となります。

一方で

log((-1)²)=log(1)=2πni

です。

値の集合として比較すると一致しません。

複素対数は多価関数なので、実数の対数法則をそのまま適用できません。

(2) Log(z²)=2Log(z) は正しいか

これも一般には成立しません。

例えばz=iの場合、

Log(i)=πi/2

なので

2Log(i)=πi

です。

しかし

Log(i²)=Log(-1)=πi

となり、この例では一致します。

ところがz=e^{3πi/4}の場合、

Log(z)=3πi/4

なので

2Log(z)=3πi/2

です。

一方、z²=e^{3πi/2}=e^{-πi/2}より

Log(z²)=-πi/2

となり一致しません。

主値は偏角を-πからπの範囲に折り返すため、指数法則が崩れるのです。

(3) (e^α)^β=e^(αβ) は正しいか

一般には成立しません。

複素冪は

w^β=e^{βLog(w)}

で定義されます。

そのため、

(e^α)^β=e^{βLog(e^α)}

となります。

しかしLog(e^α)が必ずしもαとは限りません。

例えばα=2πiなら

e^α=1

なので

(e^{2πi})^β=1^β=1

ですが

e^{αβ}=e^{2πiβ}

となり、一般には1になりません。

(4) log(αβ)=log(α)+log(β) は正しいか

これも一般には成立しません。

複素対数では偏角が2πだけずれる可能性があるため、

log(αβ)=log(α)+log(β)+2πki

という関係になります。

例えばα=β=-1なら、

log(-1)=i(π+2πm)

です。

すると

log(-1)+log(-1)=2πi+4πmi

ですが、

log(1)=2πni

となり、完全には一致しません。

なぜ実数の公式が壊れるのか

原因は複素数の偏角が一意に定まらないことです。

実数の対数関数は一価関数ですが、複素対数は無限個の値を持ちます。

そのため、実数で当たり前だった指数法則や対数法則がそのままでは成立しなくなります。

一般の場合
log(z²)=2log(z) ×
Log(z²)=2Log(z) ×
(e^α)^β=e^(αβ) ×
log(αβ)=log(α)+log(β) ×

まとめ

複素関数論では、logは多価関数、Logは主値という違いがあります。実数で成り立つ指数法則や対数法則は、複素数では偏角のずれによって一般には成立しません。そのため、複素解析では公式を機械的に使うのではなく、対数の定義と偏角の扱いを常に意識することが重要です。

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