差動増幅回路の同相利得を理解する:理想電流源接続時の半回路解析とエミッタの扱い

工学

差動増幅回路の解析では、差動入力と同相入力で回路の見え方が大きく変わります。特にエミッタ共通点に理想電流源が接続されている場合、「同相半回路ではエミッタが浮いてしまうのではないか」「同相利得はどのように求めればよいのか」という疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、差動増幅回路の同相解析における理想電流源の意味と、パイ型等価回路を用いた考え方をわかりやすく解説します。

差動解析と同相解析で半回路の扱いが異なる理由

差動入力の場合、左右対称面は交流的な接地点(仮想接地)として扱えます。そのため半回路解析が容易になります。

一方、同相入力では左右のトランジスタに同じ信号が加わるため、対称面には電流が流れません。このときエミッタ共通点は仮想接地にならず、理想電流源の性質が解析に大きく影響します。

理想電流源は交流的にどう見えるのか

小信号解析では、理想電流源の交流内部抵抗は無限大です。つまり交流的には開放回路として振る舞います。

そのため、エミッタ共通点から下方向を見ると交流的には電流が流れない状態になります。質問にある「エミッタが浮く」という感覚は本質的には正しく、理想電流源の場合はエミッタ電位が入力に追従して動くことになります。

理想電流源は交流的には開放回路であり、これが同相利得が小さくなる根本原因です。

なぜ同相利得がゼロになるのか

理想的な差動対に同相入力を加えると、エミッタ点もほぼ同じ電圧だけ変動します。

その結果、ベース電圧とエミッタ電圧の差である小信号ベース・エミッタ電圧 vbe がほとんど変化しません。

トランジスタのコレクタ電流変化は vbe に比例するため、vbe が変化しなければコレクタ電流も変化しません。

コレクタ電流が変化しなければコレクタ抵抗に電圧変動が生じないため、出力電圧も変化しません。

項目 理想電流源の場合
交流内部抵抗 無限大
エミッタ点 入力に追従
vbe変化 ほぼ0
コレクタ電流変化 ほぼ0
同相利得 理想的には0

パイ型等価回路ではどう考えるか

パイ型等価回路で考える場合も本質は同じです。

エミッタ共通点が交流的に開放されているため、入力信号に応じてエミッタ電位が変動します。その結果、rπ にかかる電圧がほぼゼロになります。

gmvπ で表される電流源も動作しないため、コレクタ電流変化が生じません。

質問にある「vce が求まらない」というよりも、「そもそも vπ がほぼゼロになり増幅作用が発生しない」と考える方が理解しやすいでしょう。

実際の回路では同相利得はゼロにならない

現実の電流源には有限の出力抵抗があります。そのため完全な理想電流源ではありません。

電流源の出力抵抗を ro とすると、同相入力時にはエミッタ点が完全には追従できず、わずかに vbe が発生します。

その結果、小さなコレクタ電流変化が生じ、同相利得もゼロではなく有限値になります。

差動増幅回路で重要なCMRR(同相信号除去比)は、この電流源の出力抵抗が大きいほど向上します。

まとめ

差動増幅回路のエミッタに理想電流源が接続されている場合、同相解析では電流源は交流的に開放回路として扱われます。そのためエミッタ点は入力信号に追従し、vbe がほぼゼロとなるためコレクタ電流が変化せず、理想的な同相利得は0になります。パイ型等価回路でも同様に、vπ が発生しないことに着目すると理解しやすくなります。実際の回路では電流源の出力抵抗が有限であるため、わずかな同相利得が生じる点も併せて押さえておきましょう。

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