円周率πの小数展開を使った数列の問題では、「切り捨て」と「上限・下限」の違いを正確に理解することが重要です。特に大学初級レベルの集合論や実数論では、最大値と上限は別物として扱われます。
この記事では、「円周率の小数展開において、第(n+1)位以下を切り捨てた値をanとする」ときの集合\({a_n\mid n\in\mathbb{N}}\)について、最大値・最小値・上限・下限を丁寧に証明付きで解説します。
問題の設定を整理する
円周率πの小数展開は
π=3.1415926535…
です。
ここで、「第(n+1)位以下を切り捨てた値」をanとします。
例えば、
| n | an |
|---|---|
| 0 | 3 |
| 1 | 3.1 |
| 2 | 3.14 |
| 3 | 3.141 |
となります。
つまりanは、πを小数第n位まで残して、それ以降を切り捨てた数です。
数列anの性質
まず重要なのは、すべてのanについて
a_n<π
が成立することです。
なぜなら、πは無理数なので有限小数で完全一致することがなく、切り捨てれば必ずπより小さくなるからです。
また、nが大きくなるほどπに近づきます。
例えば、
- 3
- 3.1
- 3.14
- 3.141
- 3.1415
のように単調増加しています。
つまり、この数列は
単調増加かつπ未満
という特徴を持っています。
下限と最小値を求める
集合\({a_n\mid n\in\mathbb{N}}\)の最初の値は
a_0=3
です。
その後は増加していくため、3より小さい値は現れません。
したがって、
- 最小値:3
- 下限:3
となります。
証明
任意のnについて、πの整数部分は3であるため
a_n≥3
です。
さらにa0=3が集合に含まれているため、3は実際に達成されます。
よって3は最小値であり、同時に下限でもあります。
上限を求める
各anはπを切り捨てた値なので、常に
a_n<π
です。
しかしnを大きくすると、anはπにどんどん近づきます。
つまり、πより小さいどんな数を取っても、それを超えるanが存在します。
例えば3.14159より大きいanは後ろの項に存在します。
したがって、πはこの集合の最小上界です。
よって、
上限=sup{an}=π
となります。
証明
任意のnについてan<πなので、πは上界です。
次に、πより小さい任意の実数Mを取ります。
π-M>0であるから、十分大きいnを取れば
π-a_n<π-M
すなわち
a_n>M
となります。
したがってMは上界ではありません。
よってπは最小上界、つまり上限です。
最大値は存在するか
最大値とは、「集合の中に実際に存在する最も大きい値」です。
しかし、どのanもπ未満であり、しかもnを大きくすればさらに大きい項が存在します。
例えば、
- a2=3.14
- a3=3.141
- a4=3.1415
のように、必ずもっと大きい項があります。
したがって、最大値を持ちません。
証明
任意のnについて
a_n<a_{n+1}
が成立します。
よって、どのanを取っても、それより大きい項が存在するため、最大値は存在しません。
最終的な答え
| 項目 | 答え |
|---|---|
| 最大値 | 存在しない |
| 最小値 | 3 |
| 上限 | π |
| 下限 | 3 |
まとめ
この問題では、「最大値」と「上限」の違いを理解しているかが重要です。
数列anはπに限りなく近づきますが、πそのものにはならないため、πは上限ではあっても最大値ではありません。
一方で、最初の項3は実際に集合に含まれており、それより小さい値も存在しないため、最小値かつ下限になります。
実数論では、この「近づく」と「到達する」の違いが非常に大切になります。


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