「AI翻訳が一瞬でできる時代に、なぜ大学入試では英文和訳や英作文をやるのか」と疑問に感じる人は少なくありません。
実際、スマホやAIを使えば、高精度な翻訳は数秒で可能です。
そのため、「四則演算を電卓でやる時代に筆算を試験しているようなものでは?」と感じる人もいます。
しかし、大学入試で英文和訳や英作文が今でも重視されているのには、単なる翻訳以上の理由があります。
大学入試の英語は「翻訳能力」を測っているわけではない
まず重要なのは、大学入試の英文和訳や英作文は、“翻訳家としての能力”を測る試験ではないという点です。
大学側が見ているのは、「英語を論理的に理解し、自分で組み立てられるか」という部分です。
例えば英文和訳では、単語の意味だけでなく、以下のような能力が問われます。
- 文法構造を理解できるか
- 修飾関係を正確に読めるか
- 論理展開を把握できるか
- 曖昧な日本語に逃げず説明できるか
つまり、「AIで訳せるか」ではなく、「自分で意味を解析できるか」が評価されているのです。
英作文は“考える力”を確認しやすい
英作文も同様で、単純に英語を書かせたいわけではありません。
大学側は、「限られた語彙・文法で、自分の考えを論理的に表現できるか」を見ています。
例えば、「環境問題についてあなたの意見を書きなさい」という問題では、英語力だけでなく思考力や構成力も問われます。
AIなら綺麗な文章は作れますが、受験では“本人がどのように考えたか”が重要視されています。
これは国語の小論文や数学の途中式にも近い考え方です。
では、なぜリスニング中心にしないのか?
「実用英語ならリスニングだけでよくないか?」という意見もあります。
実際、共通テストではリスニング比率が以前より大きくなっており、英語教育は“読むだけ”から変化しています。
しかし、大学入試では以下の理由から、リスニングだけでは測りきれない部分があります。
| 能力 | リスニングだけでは測りにくい点 |
|---|---|
| 論理読解力 | 複雑な文構造の理解 |
| 記述力 | 自分で文章を組み立てる能力 |
| 正確性 | 曖昧に理解せず厳密に読む力 |
| 思考力 | 内容を整理して表現する力 |
特に難関大学では、「速く読めるか」だけでなく、「深く理解できるか」を重視する傾向があります。
TOEIC型の試験では測れない能力もある
TOEICのような試験は、短時間で大量の英文を処理する能力を測るのに向いています。
一方で、大学入試は“学問を学ぶための土台”を見る試験という側面があります。
大学では、論文・専門書・研究資料など、複雑な英文を丁寧に読む場面も多くあります。
そのため、大学側としては「高速処理」だけでなく、「精密な理解力」も確認したいのです。
つまり、TOEIC型と大学入試型は、そもそも目的が少し違うと言えます。
AI時代だからこそ“自分で理解する力”が重要という考え方
最近では、「AIがあるから暗記や翻訳は不要では?」という議論も増えています。
しかし逆に、「AIの出した答えが正しいか判断する力」が重要になるという意見もあります。
例えばAI翻訳は便利ですが、文脈によっては不自然な訳になることもあります。
自分で英語構造を理解できなければ、その誤訳にも気づけません。
そのため教育現場では、「AIを使う前提でも、基礎能力は必要」という考え方が根強く残っています。
実際に大学入試の英語は少しずつ変化している
とはいえ、大学入試英語が全く変わっていないわけではありません。
近年は以下のような変化も進んでいます。
- リスニング比率の増加
- 長文読解量の増加
- 実用的な文章の採用
- 要約問題の導入
- 4技能重視の流れ
特に共通テストでは、昔より「情報処理能力」や「実践的読解力」が求められるようになっています。
つまり、完全に昔のままではなく、徐々に“実用英語寄り”へ変化している途中とも言えます。
まとめ
英文和訳や英作文は、AI翻訳が発達した現代では「時代錯誤」に見える部分もあります。
しかし大学入試では、単なる翻訳能力ではなく、「論理的に理解し、自分で表現できる力」を測る目的があります。
また、リスニングやTOEIC型試験だけでは測りきれない、“精密な読解力”や“思考力”を重視している大学も多くあります。
一方で、共通テストの変化などを見ると、大学入試英語も少しずつ実用性重視へ移行している途中だと言えるでしょう。


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