高校物理で「垂直抗力」を学び始めると、多くの人が一度は混乱するのが“物体を重ねたときの力の考え方”です。
特に、質量m(a)の物体aを質量m(b)の物体bの上に置いたとき、地面が物体bを押し返す垂直抗力が {m(a)+m(b)}g になる理由は、最初は直感に反して見えるかもしれません。
「物体aには物体bから m(a)g の垂直抗力が働いているなら、aの重さはそこで打ち消されているのでは?」と感じる人も多いです。
この記事では、垂直抗力の基本から、“なぜ足し算になるのか”を順番に整理していきます。
まずは垂直抗力の基本を確認する
垂直抗力とは、物体が接している面から受ける押し返す力です。
例えば、床の上に質量mの物体を置くと、物体には下向きに重力mgが働きます。
静止している場合、床は同じ大きさの上向きの力を返します。
これが垂直抗力です。
つまり。
「押された分だけ押し返す」のが垂直抗力の基本イメージです。
物体aだけを見ると、確かに垂直抗力はm(a)g
ここで、上に乗っている物体aだけに注目してみます。
物体aには。
- 下向きに重力 m(a)g
- 上向きに物体bからの垂直抗力 N
が働いています。
静止しているので力はつり合い、
N = m(a)g
になります。
ここまでは質問者の考え方と同じです。
重要なのは「aがbを押している」という点
ここで物理の重要ポイントが出てきます。
物体bがaを上向きに押しているなら、同時にaもbを下向きに押しています。
これは作用・反作用の法則です。
つまり。
- b → a に上向き m(a)g
- a → b に下向き m(a)g
が同時に存在しています。
このため、物体bは。
- 自分自身の重力 m(b)g
- 物体aから押される力 m(a)g
の両方を下向きに受けています。
つまり物体bには合計で。
{m(a)+m(b)}g
の下向きの力がかかっています。
だから地面はその合計を支える必要がある
物体bが静止しているなら、地面はその下向きの力を全部支えなければなりません。
そのため、地面から物体bへの垂直抗力は。
{m(a)+m(b)}g
になります。
ここで大事なのは、地面は「bだけ」を支えているのではなく、結果的に“aの重さも含めて”支えているという点です。
「aの重力は消えたのでは?」と感じる理由
混乱しやすいのは、「aの重力はbからの垂直抗力で打ち消された」と考えてしまう点です。
確かに、物体aだけを見ると。
- 重力
- 垂直抗力
はつり合っています。
しかし、その垂直抗力は“どこから来たか”が重要です。
bがaを支えるためには、b自身がその分押し返さなければなりません。
つまり、aの重さは消えているわけではなく、bを通して最終的に地面へ伝わっています。
エレベーターで考えるとイメージしやすい
例えば、体重60kgの人がエレベーターの床に立っているとします。
床はその人を支えるために上向きの力を出しています。
しかし同時に、人も床を下向きに押しています。
だからエレベーター全体には、その人の体重分の力が加わります。
物体aとbの関係もこれと同じです。
垂直抗力は「その物体だけ」で考えるのがコツ
物理では、どの物体に注目しているかを明確にすると整理しやすくなります。
| 注目する物体 | 働く力 |
|---|---|
| 物体a | 重力m(a)g、bからの垂直抗力 |
| 物体b | 自分の重力、aから押される力、地面からの垂直抗力 |
「今どの物体を見ているか」を分けると、混乱がかなり減ります。
まとめ
物体aを物体bの上に置いたとき、地面からbへの垂直抗力が {m(a)+m(b)}g になるのは、aの重さも最終的にbを通して地面へ伝わるためです。
物体aには確かに b から m(a)g の垂直抗力が働いていますが、その反作用として、aもbを同じ大きさで下向きに押しています。
その結果、bは。
- 自分の重力
- aから押される力
の両方を受けることになり、地面はそれをまとめて支える必要があります。
垂直抗力の問題では、「どの物体に働く力か」を丁寧に分けて考えることが理解の近道です。


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